特集 2012年4月11日

駄菓子『この人だ~れ?』から目が離せない!

ただの歴史上の偉人のおまけシールと思ったらちょっと違う。
ただの歴史上の偉人のおまけシールと思ったらちょっと違う。
『この人だ~れ?』というお菓子を知っているだろうか。ひとつ10円、基本コンビニには売っていない、いわゆる「駄菓子」だ。もちろんおまけつき・当たりつき。そのおまけについてる歴史人物シールが…とにかくテンション上がるのです!あなたが歴史好きならなおのこと!
1972年佐賀県生まれのオトナ向け仕事多数のフリーライター。世間の埋もれた在野武将的スゴ玉の話を聞くのが大好き。何事もほどほどに浅く広く、がモットー。

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シールの偉人リミックス感がヤバイ

おまけ付き・当たり付きの駄菓子というのは昔に比べてずいぶん見なくなった感あるけども、それでもまだまだある。昔ながらの町の駄菓子屋みたいなのは減りつつあるけど、最近だとショッピングモールなんかに今風の駄菓子屋なんかもあったりね。

でもまあ昔ながらのビッグカツとかヨーグルト風のやつとかでしょ?と思っていた。しかし、知人から「すごい駄菓子がある!」と聞いたのがこの『この人だ~れ?』。1個10円、振るとシャカシャカ音がしている。
小さいながらインパクトあるパッケージ。ザ・駄菓子感。
小さいながらインパクトあるパッケージ。ザ・駄菓子感。
開けると仁丹状のラムネと
開けると仁丹状のラムネと
シールが一枚。武田信玄キター!
シールが一枚。武田信玄キター!
裏には説明書き。ためになる!
裏には説明書き。ためになる!
基本的にシール大好きだし、高校時代世界史の点数だけはズバ抜けてたくらいには歴史好きなわたくし。こういうのってコレクト・ゼム・オール気分が発動してたしかにたまらん!でもこれだけでそんなハマりはしない。なんか普通だもんなあ。

では他の箱も開けてみよう。おお、今度は世界の偉人が2枚。
レオナルド・ダ・ヴィンチとジャンヌ・ダルク。
レオナルド・ダ・ヴィンチとジャンヌ・ダルク。
『源氏物語』の紫式部に
『源氏物語』の紫式部に
開国の重要人物・ペリー。後ろにも黒船が…って、ん?
開国の重要人物・ペリー。後ろにも黒船が…って、ん?
ダヴィンチとジャンヌ・ダルクはいかにも歴史の教科書に載ってるような写真から切り抜いた感がある。しかし紫式部とペリーの2枚、たしかにこの顔だったけど背景ってこんなだったっけ? 黒船をバックに写るペリー、て記念写真みたいだ。

さらにめくっていくとこんな世界の大物シールが!
宇宙の深淵から現れたような毛沢東主席。
宇宙の深淵から現れたような毛沢東主席。
雲間からぬっと現れたケネディ大統領。
雲間からぬっと現れたケネディ大統領。
米中に限らず国家首脳クラスの写真はもともと威厳あるんですが、背景との組み合わせでさらにパンチが効いた感じに!額に入れて飾りたいクラス。

逆にもともと写真は地味なのに背景でパワーアップした例も。滝廉太郎ってこんな目チカチカしたっけ?みたいな。
滝廉太郎と樋口一葉が市松模様タッグ結成!
滝廉太郎と樋口一葉が市松模様タッグ結成!
あと先の武田信玄みたいに家紋がプラスするパターンが戦国武将系は多いのだけど、おなじみのロゴマーク?を付けたらちょっと可愛くなったのがこちら。
与謝野晶子もちょっとkawaiiな感じに。
与謝野晶子もちょっとkawaiiな感じに。
ちなみに右のハートマークは与謝野晶子の歌集「みだれ髪」のロゴです。当時ハートマークってのも斬新だったのかもしれないけど、写真と並べるとさらにインパクトありますね。なんかもうプリクラみたいだ。

そして今まで出した中で、個人的に一番インパクトあったのがこれ。細菌学の研究で知られる野口英世ですが…。
なんかもうサイケデリックだ。
なんかもうサイケデリックだ。
背景のグンニャリした模様は細菌学だけに顕微鏡を覗いたイメージなのか、髪のモジャモジャ感なのか。ともかく、こんな感じでただの偉人シールじゃないインパクトが『この人だ~れ?』には詰まりまくっているのです。

たしかに幕末ブームだとか戦国ブームだとか歴女だとか、日本全体的に「歴史ブーム」感はある。それだけで作ったとは思えないこの『この人だ~れ?』。コレクト欲とそのデザイン見たさについつい開けてしまいたくなる感じ、わかっていただけたでしょうか?

一体どんな会社からコレが生まれたのか?その謎に迫るべく本社に取材させていただくことにしました。
ということで会社がある東大阪市へ。そこには…。
ということで会社がある東大阪市へ。そこには…。
『この人だ~れ?』だけでない衝撃が待っていた!
『この人だ~れ?』だけでない衝撃が待っていた!
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歴史は社長の趣味?だけじゃない

『この人だ~れ?』を生み出した人、いわば偉人シールの父だから超偉人クラス!それは東大阪市にいらっしゃった。製造元のジャック製菓(株)の中野社長だ。

『この人だ~れ?』も印象的だが、検索で同社のお菓子を調べてると同社のお菓子は名前がインパクトあるのがよくわかる。『パンダだブー』『ヤッター!めん』『ツッコミプレートシール』『ニャンとかしてケロ』『イカすぜ!』『うんちくんグミ』『すしくいねえチョコ』 …。中でもうんちくんグミはすごいな!出す前からもう出てる(失礼)。

大学傍のごく普通の住宅街の中にあるジャック製菓。ばたばたとお菓子がいっぱいに詰められたダンボールの出荷が続いてる中で社長の中野幹さんにお話をうかがった。
住宅街にせり出した昭和の古豪感ある看板。
住宅街にせり出した昭和の古豪感ある看板。
まさかここから数々の偉人(のシール)を輩出しているとは…。
まさかここから数々の偉人(のシール)を輩出しているとは…。
ジャック製菓はもともとお菓子の問屋で、同地に社屋を移したのが昭和23年。それからはお菓子の製造を中心にシフトし、現在の中野幹さんが三代目。チョコやグミなどのお菓子の製造からパッケージまでほとんどがこの工場の中で行われているそう。
お話うかがった中野社長。
お話うかがった中野社長。
現行のカタログ。10円菓子のオーソリティ!
現行のカタログ。10円菓子のオーソリティ!
「だいたいが幼児や児童向けの駄菓子、1個10円のを専門にやってるんですけどね」

--それが我々の周りでブームなんですよ!『この人だ~れ?』が!

「いやあ、ありがたいことです。全国的にはびっくりするほど売れてるわけじゃないんですけど。ははは」

--これはいつ頃から製造されてるんですか?

「ええっと、『この人だ~れ?』は…(ファイル調べ中)…平成22年の4月からですね。ちょうど2年くらいですか」

--やっぱり歴史ブームだからそれに乗って、って感じですか?

「それもありますけど、どっちかというとわたしが歴史好きだったんで。ははは」

--中野社長の趣味で!じゃあ今までに同様の歴史ネタ駄菓子ってのは…。

「いやっ、ないです。(商売の)対象の子供には難しすぎるかなと思ってたんですけど、最近有名人が答えるクイズ番組とかあるじゃないですか。そういうので歴史の人物の顔出して『誰でしょう』とか。それやったらまあそこそこいけるんじゃないか? って」
なんと歴史人物シールは社長の趣味だった!よく会社社長で信長や秀吉好きがいるけども、歴史全般かつそれを仕事に活かすとは。まさに趣味と実益!しかしこの熱は子供にはまだ届いてないのか…。買えばテンション上がるぞ、子供!

それにしても前ページにあるように、ただ歴史人物のアップを貼っつけるだけでなく背景も手加えてあったりとえらく凝ったシールなのが気になるんですが…。
なんかガーリーとかそんな感じの3枚。キュリー夫人・宮沢賢治・ナイチンゲール。
なんかガーリーとかそんな感じの3枚。キュリー夫人・宮沢賢治・ナイチンゲール。
--ちなみに何種類シールはあるんですか?

「70種類ですね。いちおう売れたら第2弾も出そうと思って倍は考えてるんですけど、あかんかった場合のこともありますんで(苦笑)」

--まだ第2弾の予定は未定と。

「そうですねえ。第一弾はポピュラーなやつ、これやったら皆知ってるであろうものですね」

--じゃあ中野社長がシールになる歴史上の人物ののセレクトもして。

「あと後ろの文章も書いてますし、写真もわたしがやってるんですよ」

--ええー!あのデザインとか全部社長が!

「資料から集めてわたしが加工してるんです。あと他のお菓子のイラストとかも」
これらのイラストやデザインも中野社長作。
これらのイラストやデザインも中野社長作。
これらの箱のパッケージまで!
これらの箱のパッケージまで!
「箱の絵から全部やってるんですよ。経費削減ですわ。ははは」

--削減っていっても簡単にイラストとか書けないですよ普通!

「最初は印刷屋さんに任せてたんですけど、書き直す度にお金かかるんでもったいないさかいに、それなら自分んで書くわって。勉強したわけじゃなくて好きなだけですけどね」
大会社のお菓子に比べたら駄菓子工場は「手作り度」は高くなると思っていたけれど、まさか社長自らの手によるシールやパッケージだったなんて…。予想以上の手作り度!

話を聞いてる途中、ジャック製菓工場の中を見学させていただけることになった。もともとチョコレートが主力だったというこちら、いわば「チャーリーとチョコレート工場」じゃなくて「ジャックのチョコレート工場」ですな。
あのカラフルな丸の感じ、見たことある…!
あのカラフルな丸の感じ、見たことある…!
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菓子製造もパッケージも!工場見学

現在20種類以上の商品を市場に出しているジャック製菓。個性的なネーミングとパッケージの商品の企画は社長と若い3人のスタッフが相談して決めている。現在の新作ペースは約半年に一回。だいたいお菓子を思いついた時には名前のイメージも出来上がってるそう。
社長がネーミング気に入ってるという『ニャンとかしてケロ』。
社長がネーミング気に入ってるという『ニャンとかしてケロ』。
これは珍しく他から借りてきたキャラだそうです。
これは珍しく他から借りてきたキャラだそうです。
お菓子メーカーといってもこちらは「10円菓子専門」。やはり値段との戦いはハンパないようだ。10円の中にお菓子とおまけとパッケージ、さらに当たり付きで儲かるような金額でなくてはいけない。しかも今のコンビニは当たり付商品は置いてくれない。そこはおまけの工夫、お菓子の工夫でやりくりを続けている。もともとはチョコレート中心だったお菓子も今は工場内でいろんな種類を製造している。
メインであるジャックのチョコレート製造機。
メインであるジャックのチョコレート製造機。
もともとチョコレートメインだったジャック製菓だけれど、チョコの弱点は秋から春までしか製造できない「季節もの」なこと。現在の主力はそこを打開したラーメン菓子の『ヤッター!めん』だとか。たしかに手も汚れないし、量も食えるしね。
売れ線の『ヤッター!めん』。一度ここから食い放題したい…。
売れ線の『ヤッター!めん』。一度ここから食い放題したい…。
色がきれいなマーブルチョコ。ダイブしたい。
色がきれいなマーブルチョコ。ダイブしたい。
この日はお休みだったグミ製造コーナー。
この日はお休みだったグミ製造コーナー。
入り口からすると驚くほど深く入り組んだ工場。その中にいろんなお菓子が作られてる感じってファンタジーな感じだなあ。映画『チャーリーとチョコレート工場』に負けてない!東大阪のチャリチョコ!

ちなみにお菓子は全種類作ってるわけでなく、『この人だ~れ?』の中に入っていたるラムネ系なんかは外部で作ったものを入れてるのだとか。
お菓子とおまけをひとつずつ入れていって…。
お菓子とおまけをひとつずつ入れていって…。
表の紙を貼って、あとは断裁するだけ。
表の紙を貼って、あとは断裁するだけ。
そして今回ジャック製菓に直接取材できるにあたって、聞いてみたいことがあった。それは「レアカード」とおぼしき存在。○○○○○の○○があるらしい、というと皆盛り上がるんだよなー。自分も最初聞いて驚いた。
--そういえば『この人だ~れ?』で○○○○○の○○が我々の中ではレアカードなんじゃないか?て疑惑がありまして。

「ははは、あれはギャグですわ」

--そもそも実在の人物…いやいるんだけどあんな顔かどうか不明というか。

「別に珍しいシールってわけじゃないですけど、お遊びですんで。ああいうのもいいかなと」
「偉人」ではないが「歴史人物」なのは確かな○○○○○の○○。これが出てきた時爆笑したもんなあ。紹介したいが自分の手元にないのが残念だ!

と、思ったら帰りに中野社長から一箱『この人だ~れ?』をいただいた。うおー、100個入り!これは頑張って探すしかない、あのレアカードぽいアイツを!
さあ一体誰のシールでしょう?答えは次で!
さあ一体誰のシールでしょう?答えは次で!
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レアシール?な犯人を捜せ

さてせっかく中野社長からいただいた一箱、「レアカードっぽいアイツ」を出すために頑張って開けてみよう。一箱100個入り、シールの種類は70種類。必ず一枚は入ってるそうなので、早々に出る可能性もある。
よく見ると左下に「第一弾!!」てありますね。
よく見ると左下に「第一弾!!」てありますね。
さあ開けよう。子供のころの俺に見せてあげたい。
さあ開けよう。子供のころの俺に見せてあげたい。
100個もの「この人だ~れ?」、ほぼ開け放題!あまり複数買い系の大人買いはしない性質なので、これだけの量をばかばか開けていくのは始めてかもなあ。それを贅沢と思うよりは、どうせなら早めに見つけてしまいたい、と思うのが貧乏性か。
記念すべき第一歩は…
記念すべき第一歩は…
千利休。比較的クラシックな一枚。
千利休。比較的クラシックな一枚。
食ってくとキリないのでグラスに溜めていきます。
食ってくとキリないのでグラスに溜めていきます。
どんどん行くよー。お、この組み合わせは…。
どんどん行くよー。お、この組み合わせは…。
チンギスハンからの源義経、ていい繋がりだな!意味分からない人は陰謀論とか好きそうな歴史好きに聞いてみよう!ともかく出る順番によって「お、これは××繋がりだねえ」なんてニヤニヤしちゃうのも楽しい。

そしてまだ見てなかった「え、こんなシールもあったの?」的な一枚、いや二枚三枚も。
パンパカパーン!なリンカーン。
パンパカパーン!なリンカーン。
まさかのブルース・リー。頬の血が赤いのがイイ!
まさかのブルース・リー。頬の血が赤いのがイイ!
この写真は顔じゃなくて棺なんじゃ…。
この写真は顔じゃなくて棺なんじゃ…。
どれも貼りがいがあるというかもったいなさすぎて貼りづらいというか…。いいのあるなー。ブルース・リーとかもうコレで満足したからいいや、十分レアシール!はい終わり!と言いたいくらい。

しかし本題のアレが出てこない。そのうち開けたお菓子は10個20個30個…。関西の人気TV番組『ロケみつ』にレアお菓子をひたすら当てるまで探し続けるコーナーがあるけれど、これに近い気分か。まだ歩かないだけいいけども。
10個突破。出ないなー。
10個突破。出ないなー。
40個突破。出ないな出ないなー。
40個突破。出ないな出ないなー。
そしてお菓子だけが積んでいく…。
そしてお菓子だけが積んでいく…。
そんな時にこれ出るとちょっとイラッと来る。
そんな時にこれ出るとちょっとイラッと来る。
むむむ、必ず入ってるからと楽観視してたら開けたお菓子は50個突破。それでもまだ出ない…。自分のくじ運の悪さをこういう時痛感するなあ。前厄だから?

と思ったところに出たー!!計64個目!偉人ではないけど、日本の現代史では有名なあの男。それとなくお菓子で隠してみましたが、中野さんがシャレで入れたこの歴史上の人物は誰でしょう?
日本だとリンカーンやブルース・リーより知られた顔かも。
日本だとリンカーンやブルース・リーより知られた顔かも。
これだけ開けてやっと。
これだけ開けてやっと。
レアじゃないけどレア感あるこのシール。しかしここまでいくつか紹介したシールの中で欲しいッ!と思えるのがあった人も多いのでは。それが君のレアシールだ!

歳を取るとあまり食べることもない駄菓子。しかしひさびさにその世界を覗いてみると当時と変わらない、いやむしろ過去に負けてないワンダーがあるもんだなあと今回の『この人だ~れ?』で思わされました!第2弾、俺は待ってます!
答えは「三億円事件の犯人」でした!
答えは「三億円事件の犯人」でした!

知らない間にケーキにされてた。
知らない間にケーキにされてた。

グラスいっぱいのお菓子が余ってます

ちなみにお菓子はスタッフがおいしくいただきました。…といいたいけど、これからちょこちょこ食べていきます。アメリカの奇抜なカフェとかで出してそうな色合いですね。
協力:ジャック製菓
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