特集 2014年5月8日

測ろうスマホで坂の角度を ~坂-1グランプリ開催します~

スマホを坂にあてるだけ!(ガラケー派の方のためにオリジナル坂道計もつくりました!)
スマホを坂にあてるだけ!(ガラケー派の方のためにオリジナル坂道計もつくりました!)
街中にあふれるものの角度を測る。角度が分かるといつもの景色に数字が加わる。

角度、その純粋なる興奮よ! という記事を今から10前、当サイトで公開している(「どきどき分度器」 林 雄司)。

当時は分度器やスラントルールという傾斜を測る道具を使っているが、今や角度はスマホで測ることができるのだ。特別なアプリのダウンロードもせずに、である。

今日は皆さんに、ちょっと坂の角度を測ってもらおうと思います。
東京生まれ、神奈川、埼玉育ち、東京在住。Web制作をしたり小さなバーで主に生ビールを出したりしていたが、流れ流れてデイリーポータルZの編集部員に。趣味はEDMとFX。(動画インタビュー)

前の記事:たんすの角に足の小指をぶつけて骨折した

> 個人サイト まばたきをする体 Twitter @eatmorecakes

これぞ未来の遊びです

電話で坂の角度が測れる。

こんな未来を誰が想像しただろうか。実は私も今回初めて知ったのだが、iPhoneでもAndroid端末でも特別なアプリのインストールなしに(買った時点で入ってるアプリで)坂の角度が測れるのである。
iPhone
iPhone
Android
Android
電話で確度が測れるとは、願いもしないのにうっかり叶ってしまった夢という感じもある。

しかし、坂の角度というものを測るとしみじみ興奮するのだ。その興奮を、ぜひ読者のみんなで体感していきたい。

そう、今回の企画はTwitterを使った「坂の角度の投稿企画」なのである。最新テクノロジーで取得した坂の角度情報をSNSで共有して盛り上がろうというのだ。

これぞ未来の遊びである。
こちらがマガジンハウス「コロカル」上に設置された「坂ー1グランプリ」の投稿画面で坂の角度投稿をまってます!
こちらがマガジンハウス「コロカル」上に設置された「坂ー1グランプリ」の投稿画面。坂の角度投稿をまってます!

無駄に3サイトで企画してしまった

ローカルをテーマにしたウェブサイト、マガジンハウス社の「コロカル」とはこれまでにもパンや漬物、鍋料理の写真を集めるなどしてきたが、今回は満を持しての「坂」である。これに際し、学研「大人の科学」も乗り入れてもらった。3コンテンツ共同企画だ。

映画でいったら日仏独合作みたいな感じだ。たぶん難解な短編アニメだ。
そしてこちらが学研「大人の科学」が開発した「坂道計」。使い方は後述!
学研「大人の科学」には専用の「坂道計」を開発してもらった。使い方は後述!

いざ坂の角度を

では実践だ。以下のような流れで坂との遊び方を説明していきます。

1.坂の測り方・iOS 編
2.坂の測り方・Android 編
3.坂の測り方・「大人の科学」製 坂道計 編
4.簡単な坂の撮り方アイディア
5.実際に目黒の有名な急坂で測ってきました

(1)iPhoneで坂道の傾斜角度を測る

お恥ずかしいことに、私はしばらくiPhoneを使いながら純正のコンパスアプリに傾きを測る機能が付いていることを知らなかった(傾きが測れるのはiOS7から)。
まずは動画でどうぞ(少し暗くてすみません)
手順はこうだ

・コンパスアプリを起動
・画面にしたがって、赤い丸を転がすようにiPhoneを動かして干渉補正。
・傾きの角度が分かる画面登場!
・ゆっくりと横にして、ゆっくり坂にあてる(急いで動かすと測定が狂うことが多かったです)
※ちなみに画面が赤くなっているのは任意の地点からの測定となり水平からの測定にならないため、タップして黒い画面に戻ってください

アプリについての詳細が知りたい方は別途検索していただくとして、これで坂は測れるはず!

(2)Android端末で坂道の傾斜角度を測る

こちらも動画でどうぞ(今度はぶれててすみません)
・Google play から 「Smart tools - ツールボックス」をインストールして、起動
・メニューから一番上の段の「ルーラーと分度器」を選択
・左上のツール名が表示されているところをタッチして、「分度器II(錘タイプ)」を選択。(ツール名が表示されていない場合は右上のメニューボタンを押してください)
・分度器に対して重りが出現するので坂にあてて角度を測る

(3)「大人の科学」製 坂道計で坂道の傾斜角度を測る

そして今回の付録、オリジナルの坂道計だ。

学研「大人の科学」編集部の力作である。担当してくれたのは大人の科学でふろくの開発に携わるテクノ手芸部よしだともふみさん。

大人の科学で坂道を測る道具も作るし、テクノで手芸もするし、何しろ器用なひとなのだ。
こちらも動画でどうぞ。置くだけではありますが…
組み立てさえできればあとは置くだけ。さすが専用機器。

なお、スマホよりも薄く面積が広いので暑いときなどにぱたぱたあおぐと涼しいという大きな利点があることも付け加えておきたい。

ちなみに坂の傾斜については「測る場所によって違う」ということもあるかと思います。今回は遊びの企画。気軽になんとなく一番急っぽい場所、で測っていただければと思っておりますよ。

こうして測ったら、坂の場所(あれば坂の名前)に角度を添えて、できれば写真を合わせてツイートしていただければと思うばかりです(くわしくは坂ー1グランプリページを!)。

(4)簡単に坂らしくなる写真の撮り方

さて、坂の角度を測ったら、その坂の写真を撮りたくなるのが人情というもの。

しかし坂というのは意外に写真で撮ると傾斜が感じられないものなのだ。

できるだけ簡単に傾斜を感じさせるようにするにはどうすればいいか、写真好きの編集部 安藤に聞いてみたところ、いくつかアイディアやコツを教えてもらえた。
コツその1
坂の下から見上げるときはローアングルから撮る
「坂の下から見上げるときはローアングルで撮る」
ローアングル前の新宿区の成子坂
ローアングル前の新宿区の成子坂
ローアングル後。あおりが生きてくる
ローアングル後。あおりが生きてくる
コツその2
坂の上から見下ろすときは高い位置から撮る
「坂の上から見下ろすときは高い位置から撮る」
カメラを胸の位置で構えたビフォア
カメラを胸の位置で構えたビフォア
頭上に高々と掲げたアフター。ダイナミックな感じになった
頭上に高々と掲げたアフター。ダイナミックな感じになった
コツその3
角度をつけ、水平をずらして撮影する。こちらは ビフォア
「角度をつけ、水平をずらして撮影する」こちらは ビフォア
アフター。ズルじゃないの!? というテクだが、坂の角度を楽しめればそれでいいのだ
アフター。ズルじゃないの!? というテクだが、坂の角度を楽しめればそれでいいのだ
さらに、「簡単なコツ」とはちょっと違ってきてしまうが、下から撮るときは望遠レンズで撮影すると圧縮効果という、前後の位置関係が縮まって見える効果で傾斜が急に見える写真が撮れるということであった。

最近はやりの「べた踏み坂」といった急坂もこのテクニックで効果的に撮られていることが多いらしい。
ビフォア
ビフォア
アフター。寄っているだけ?と思いきや奥行きがのっぺりして坂感が強まっている
アフター。寄っているだけ?と思いきや奥行きがのっぺりして坂感が強まっている
望遠レンズではまず坂を撮ろうという豆知識である。

(5)実際に目黒の有名な急坂で測ってきました

ここまできたらあとは実践。

名坂の多い目黒駅から中目黒駅の間で急坂を測っていこうじゃないですか。

ちなみに目黒駅は駅前にも権之助坂という有名な坂が。小手調べに測ってみると3度であった。

今日これから向かおうというのは3度を大幅に超えてくる急坂の数々だ。
こちらが権之助坂。東京は坂の街です
こちらが権之助坂。3度。
坂の写真が続いておりますので、ここいらでお昼に食べた、目黒のさんまならぬ目黒の海鮮丼の写真眺めつつ、次ページへ続きます
坂の写真が続いておりますので、ここいらでお昼に食べた、目黒のさんまならぬ目黒の海鮮丼の写真眺めつつ、次ページへ続きます
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十七が坂・10度

まずやってきたのは十七が坂。目黒区のホームページに「あまりに急であったため、子どもが坂道の途中でころぶと、17歳になったとき不祥事が起きるという話が坂名の由来」とある。

「あまりに急であったため、子どもが坂道の途中でころぶ」までは分かるのだが、そこから先が急展開すぎである。

ちなみにこの坂の名前については諸説ある。あるというか、ありすぎるのだ。調べれば調べるほど違った由来が出てきて、由来言い出したやつ全員ここに集合! とすら思った。

さきほど測った権之助坂にまつわる菅沼権之助にもゆかりがある場所のようである
由来はともかくかなりの急坂ですぞ
由来はともかくかなりの急坂ですぞ
アスファルトではなくコンクリートの滑り止めの舗装がされているあたりも急坂を物語っている。
角度は……10度!
角度は……10度!

ばくろ坂・7度

10度! というのははたしてどれくらいの実力なのか、分からず数字が出てもややぽかんとした気持ちで次へ向かう。

到着したのは十七坂から歩いてすぐ、ばくろ坂だ。

十七坂が滑り止め付きの白坂だったのに対し、こちらは普通のアスファルトで若干傾斜は緩やかなようだ。とはいえ、急坂は急坂である。
車がえっちらおっちら上っていった
車がえっちらおっちら上っていった
またも由来にふれると、「ばくろ」とは目黒の古い方言で「風雨にさらされ穴のあいた状態」のことを指すそうだ。

路面がいつも風雨にさらされて大小の穴が開いていたから、「ばくろ坂」というらしい。
今はつるっつるに舗装された坂である。そしてカーブがいい感じ
今はつるっつるに舗装された坂である。そしてカーブがいい感じ
中央区の馬喰町同様、牛馬を売買する「博労」を由来とする説もあるそうで、説と説のそれっぽさがはがっぷりよつだ。

しかしいま注目すべきは由来ではなく坂の角度である。
7度
7度
うむ。十七坂のあの傾斜には勝てないか。

坂の角度を測っても1か所だけだとどうしてもポカンとせざるを得ないのだが、2つの坂を測ると比べの目線が生まれるのがおもしろい。

坂を測る場合はぜひ2か所以上を測るのがおすすめですぞ。
近くの美容院の閉店のお知らせが達筆だった
近くの美容院の閉店のお知らせが達筆だった

なべころ坂・8度

最後は変な名前の坂界ではなかなかの知名度を誇る「なべころ坂」だ。

由来は「鍋が転がるほどの急坂」だから。坂が急でも鍋は転がさないだろうと思うのだが、転がっちゃったというのだからそうなんだろう。

鍋が転がってなべころ。ここはもう諸説の入り込む余地はないのではと思ったがやっぱり別の説もあった。
登り切ったところにあった公園。坂名が公園にもなっている。さすが有名坂
登り切ったところにあった公園。坂名が公園にもなっている。さすが有名坂
目黒の古い方言で「なべころ」とは赤土がぬかった状態を指す言葉で、この坂が赤土がぬかりがちな坂だったことからこの名がついたという記述もあったのだ。

なんかもう180度違う説が出てきちゃうんだから由来業界の各由来のしのぎの削り方は壮絶である。

さて、角度だ。
角度は8度!
角度は8度!
「おお~」という声が出る。これまでめぐって十七坂が10度、ばくろ坂が7度。

そこへきての8度だ。うまく間に入ってきた。アタック25的にいえば「8番の窓に飛び込んだ」である。

こうして測り比べると坂の中に序列のようなものも生まれてくる。やっぱり坂は測るべきだ。
ドリタさんが鍋のイラストが入った服を着ていたのでせっかくだから、と転がっていただいた
ドリタさんが鍋のイラストが入った服を着ていたのでせっかくだから、と転がった
せっかくなのでとよしださんも転がっていた
せっかくなのでとよしださんも転がっていた。坂を楽しみすぎである

坂を測ろう、みんなで測ろう

地形にはあまり詳しくないが、急な坂を見るとおっ! と思う。坂は地形界のアイドルなのではないか。

人間であるアイドルは誰もが納得するような数値化は難しい。が、坂道は測れば角度が数字で出てくる。測れるアイドルである。

急であればあるほど良い坂かというとそういう訳でもないのがますますアイドルっぽいではないか。

みなさんの推し坂をぜひ教えてください。改めまして「坂-1グランプリ」をどうぞよろしくお願いいたします。
坂の角度を待つという体験ははじめてです!
投稿まってます! 「坂の角度を待つ」という体験もまた新鮮ですな
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