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コネタ394
 
ホームセンターでグッとくるもの選手権

 ときどき訪れてはなぜだか心ときめいてしまう場所がある。買う必要のないものに心ひかれる場所、ホームセンターだ。

 以前「薬局でグッとくるもの選手権」という記事を掲載したが、グッとくる度合いはホームセンターも負けてはいない。軍手ひとつ買いに行っただけなのに余計なものまで見てしまい、気づいたら2時間近くいることもある。

 ザ・ホームセンター。意味なく定冠詞をつけたくなるさわやかな語感の響き。

 そんなホームセンターで買うつもりはない金槌を眺めたりしたレポートをお送りします。

(text by 法師丸



 やはりホームセンターと言えば、まず思い出すのが工具類。スパナだけでもこんなに種類が揃っていて、早くもグッとくる。そしてどれを買えばいいのかわからなくなって混乱する。

 いや、今回は別にスパナを買いに来たわけではない。だから迷う必要はないのだが、それでもクラクラくる。

 いつかスパナ買いに来るときは、かなりの準備としっかりした気持ちがないと、自分がほしいスパナが買えないような気がする。締めたいボルトをしっかり確認してから訪れたい。




 両側ともスパナっぽい形になっているタイプもあるが、どれを買っていいのかわからないのは同様だ。こちらの方がより凶器っぽい感じが出ているだろうか。




 悪のにおいがする工具と言えばバールもそうだ。盗難などの事件の報道で、犯行に使われた道具の定番と言えば「バールのようなもの」。ただし、ここにあるのは確実なバールだ。曖昧さは一切ない。




 ギザギザした金やすりにもグッとくるものを感じる。なんとなく手にとっては、表面のつぶつぶをじっと見つめてしまう。気づくと数分間経ってる。

 それにしてもネーミングが「エクステリアボーイ」。エクステリアといえば建物の外回り関連全般といった意味の言葉でなかっただろうか。金やすりに名づけるには少々言い過ぎの感はあるが、その勢いは買いたい。

 ただし、ボーイの部分には依然疑問が残る。ギザギザは反抗期のメタファーなのか。




 その切れ味を誇ろうとしているのか、ピラニアの名前を冠したノコギリもあった。ピラニアン。ちょっと昔風の書体デザインと相まって、なんだかわからない迫力がある。




 バイオレンスな感じは影を潜めるが、どれを買っていいのかわからなくなると言えば、ネジコーナーの混乱ぶりはすさまじい。

 もちろん売場ではしっかり区分けして並べられているから問題ないのだが、見ている自分が勝手に混乱してくる。この品ぞろえはなんなんだ。絶対選べない。

 買うつもりもないのに、いつか買うことになるかもしれない自分を思うだけで自信がなくなってくる。



 他にも太いワイヤーや、何に使うのかわからないヒモのようなものなど、わけもわからずにグッとくるものがホームセンターにはいっぱいだ。いちいち立ち止まってしまってきりがない。

 個人的な用途では使うあては全く思いつかないのだが、いつかなんとなく買ってしまいそうな狂気が垣間見える。



 左の錠前、全体がちょうど手のひらくらいの大きさがあるもの。巨大さからも通さないぞ!という気持ちが伝わってくるが、鍵穴付近には「Bull Dog」とも書いてあって、ここでも本気度は高い。自分にはそこまでして守ろうと思うものがないことをさみしく感じたりもする。

 写真右はハードなアイテムが続いたホームセンターの中でほっと一息つかせてくれた金ぼうき、かきよせ名人だ。

 世の中にはいろいろな名人がいていいと思う。そんな中のひとり、かきよせ名人。声に出して呼んでみると親しみがわく。意外と達筆だったりするかきよせ名人。




 これまでとは別の角度から迫ってくるのが生き物対策コーナー。ダンゴムシ、ヤスデ、ゲジゲジ、いちいちテンションの高い書き方はしていない冷静なパッケージだが、その冷静さが虫たちの悪者ぶりを強く訴える。

 イラストのリアルなタッチもなんだか怖い。そこにいるのは子供の頃楽しく観察したダンゴムシではない。違った意味でグッとくる。




 ナメクジの忌避剤もやはり同じテイストで訴えてくる。恐ろしくなって目を手で覆いつつも、指の隙間から見たくなるような気持ちになるのはなぜだろうか。




 人気キャラクターのモデルとなっているネズミも、ここではすっかりダークな感じのならず者だ。リアルなタッチのイラストではないが、しっかりと悪の感じは出ている。

 商品名も「ネズレス」と、日本語と英語の組み合わせが新鮮。さらに「プロ」でダメ押しの感。とにかく本気だ。



 ヘビ用の「ヘビレス」も存在。こちらはダークな雰囲気はなく、マンガ風のヘビが目を回しているというイラスト。ソフトなタッチはいいのだが、できればシャットアウトするまでもなく始めからヘビには来てほしくない。

 右はさらにエキサイティングな感じのするコウモリ忌避スプレー。もうそれだけですごい迫力。

 一家に一本、コウモリよけスプレー。いや、そんな必要ないだろう。別にコウモリに悩まされているわけでもないのに、どうしてこんなに気になるんだろう。




 同じ生き物関連の商品でも、こちらはかわいいペットのためのおやつ。ファンシーなパッケージに「あまえん棒」というネーミング、それゆえ逆に右下の「STOP THE 尿臭」との表記が気になってくる。

 ペットを飼うことの光と陰。そもそも「尿臭」という言葉がすごい。グッとこずにはいられない。


 いろいろな売場でグッときてしまうホームセンター。少し歩いてはまた立ち止まる。目的の売場になかなかたどり着けない。下手をすると目的がなんだったか忘れてしまいそうでもある。

 店を出る頃にはグッときすぎた疲労感で一仕事終えたような気になってしまうが、それは勘違いだ。単に必要のないものを手にとっては見つめるだけで、なにも終えてない。

 グッとくるのはいいが、そこに成果みたいなものは見出そうとしない方がいい。

 それでもなんだかわからない元気をもらったような気になれるホームセンター。これから先つらいことがあったとき、スパナやバールのことを思い出せばちょっとは元気も出てきそうな気がする。


 

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