日本に古くから伝わる(ある意味)伝統的な人形「わら人形」。長い歴史があるだけあって、なかなか洗練されたフォルムをしていていいなと思うのですが、どうしても“呪い”みたいなイメージがつきまとってしまい、愛玩用の「人形」として扱われることはほとんどありません。
ならば“呪い”的な要素抜きで作ってみたら愛でる気になるわら人形ができるのはないでしょうか!?
(絵と文:北村ヂン)
フィギュアとしての“わら人形”
日本人だったらほぼ誰でも名前や形、さらには使用方法まで詳しく知っているのに、実物を見たり触ったり、使ったことがあるという話はまったく聞いたことがない“わら人形”。
まあ“呪いの”わら人形なんて呼ばれるように、思いっきり呪術用にしか使い道がない人形なので、実践レビューを聞いたことがないというのはなによりなんですが、ボク的には別に必ずしも呪いだけに使用しなくてもいいんじゃない? 普通に人形として愛でてもいいんじゃない? ……とも思うわけです。
偏見をかなぐり捨ててあのフォルムだけ見ると、シンプルかつソリッド、それでいて自然の暖かみも感じる、なかなかステキな人形だと思うんですけどねぇ。
最近じゃあ変わったフィギュアなんかも流行ってるし、なによりも、あのなんだかへんてこりんな形をしたボージョボー人形とかいうのが売れたんだから、わら人形だってもっと人気が出てもいいハズ! ……そう思いません?
……ということで今回は、呪いとかそういうのは抜きにして、自分でわら人形を作り、あのフォルムを思う存分愛でてみたいと思います。
“わら”ってどこで手に入るの?
さて、わら人形を作るに当たってまず用意しなくてはならないのは“わら”。まあ、そりゃそうだ。
泥で作ったら泥人形、菊で作れば菊人形、空気で作れば空気人形……イヤ、あれは中に空気が入っているだけで、外側はビニール製とかか。
……ま、とにかく“わら”で作るからこその“わら人形”。わらがないことにははじまりません。しかし、わらってどこで手に入るの!?
わら細工のガイドブックには、このように書かれていたのですが……。
「近くに農家があれば、きちんとお願いして、わらを分けてもらうのがよいでしょう」
まあ確かに、それが一番いい入手法なんでしょうけど、このコンクリートジャングル東京、近所に稲作をやっている農家なんてありませんからねぇ。
というわけで色々調べてみたところ、わらを売っているお店を見つけました。
ほい、早速やって来ました、こちらがわら屋さん! ……世の中、色んなショップがあるもんですな。
もちろん、わら専門店というわけではなく、縄、しめ縄、むしろなどのわら加工品や、梱包資材なども扱っているお店らしいです。
縄やむしろはその辺にドーン、ドーンと置かれているのですが、さすがにわらは店頭に陳列されていないんですよね。そこで店のおっちゃんに……。
--スミマセーン、わらってありますか?
「わら? なにに使うの?」
おっちゃんからの予想外の答え! ここで「わら人形を作るんで」って返事するのはアリなのか!? 頭がおかしい人だと思われないかな?
おっちゃんの親切心100%なアドバイスに、思わず「じゃ、ソレで」といってしまいそうになりましたが、どう考えても縄からわら人形って作れなそうなので、心を鬼にして「イヤ、わらから作りたいんで……」と返事。
すると、やっと持ってきてくれました、大量のわら!
「コレが一番お買い得だよ。一箱に5kg入って2000円!」
5kgで2000円……わらの相場ってまったく見当もつきませんが、パッと見ただけでも一生分のわら人形を作れそうなほどの膨大な量。それが2000円なら激安でしょう。でも……さすがにこんなにはいらない!
……というわけで、バラ(束)で売ってもらうことにしました。
「バラで買うと割高になっちゃうんだけどね。一束400円だよ」
確かに、尋常じゃない量が入った段ボール箱が2000円だと考えると一束400円って高いですけど、ちょろっとわら人形を作った後に、大量に残されたわらの使い道を考えたら、ちょっとくらい割高でもイイ! 毎日、納豆やカツオのたたきを作っても使い切れないですもん。