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コネタ


コネタ148
 
降りられない駅!

JRの電車に乗って天井を見上げると、でかい関東地方の路線図が貼ってある。路線図が好きでつい見入ってしまうのだが、端っこまで路線を追っていくと妙な形に広がった黄色な一角があることに気付く。

それが、鶴見線だ。川崎のひとつ隣、鶴見から出ている路線だが、支線が何本か出ているらしく、熊手のような形をしている。

以前から行ってみたいと思いつつもなかなか行くきっかけがなかった。が、最近聞いた話によると、「降りることのできない駅」があるらしいのだ。

それでは、行ってみましょう!(アトウカイさんの口調で)

乙幡 啓子

鶴見駅で早速迷ってしまう。というのも、「3・4(番ホーム) 鶴見線」と書いた看板が下がっているのに、連絡階段を上がってもそれらしいホームがない。

と探していたら、とある改札の向こうに電車が止まっている。あれか?鶴見線は。なぜか、もう一度改札を通らないと鶴見線のホームに出られないのだった。


あれかー。
今回は浅野で乗り換えて支線の終点海芝浦へ。

聞いたこともないような発車音楽を聞きながら、電車はスタート。「扇町」行きにとりあえず乗り、途中で乗換えとなる。

目指すは「海芝浦駅」。種明かしをすると、鶴見線は工業地帯を走っていて、その駅は工場の中にあるため、一般人は降りることができないのだ。


早くも注意書きが(当たり前か)。
こんな行き先表示の背景色、見たことない。

最初の駅「国道」(よく考えたらこの駅名すごいな)では「カモメ公害にご注意」という看板があり、早くも旅情が増してくる。車窓からは初め、住宅のひしめき合うさまが見えていたが、進むにつれ工業地帯の様相を呈してくる。

各駅に降りてみたいのだが、休日は一層運行本数が少ない(昼間は1時間に2本・支線行きは1時間に1本!)ので断念。めぐっていたら夜中になってしまうし、夜中は電車走ってないし。



途中乗り換えの浅野駅。川崎から10分ほどでもう「田舎の夏休み」的な風景。
片側は太平洋ベルト。

乗換駅で30分待ってようやく支線行きに乗れた。進行方向左側の車窓は海、右側は工場が並ぶ。日本ではない、どこか。そんな風景だ。

そして問題の「海芝浦」駅に到着〜。「折り返し○○時○○分に発車します」とのアナウンスが響くなか、下車。


海芝浦駅。海に浮いてるような駅だ。
行き先表示看板が、JR東日本の他のと違う規格なのは、なぜ。
壁のすきまから波打つ海の様が見える。川崎から10数分で・・・。
認定済だった。これは認定せざるをえんよ、と思う。

一緒に降りた人は家族連れ、男女3人グループ、鉄道ファンと思われる若者4〜5人。降りられない駅にまで休日やってきた物好き、もとい趣味人たちだ。

簡易Suica(!)を通るとゲートのような施設があるのだが、我々が行けるのはそこまで!中には守衛さん。ああ、降りられない・・・。なんて駅なんだ、憎いぜコノヤロー、という歯がゆさを味わうために皆やってくるのだろうか。


ここは東芝さんの敷地内だったのだ。
本当に「一般人は降りられない」駅だった。。
簡易Suica!初めて見た。その向こうを曲がるとそこはもう東芝。
手前が出場用、向こうの緑のが入場用。そういえばこれは通せんぼの機能がない。

駅の写真を撮りつつ手持ち無沙汰な人々。もうすることがない。ふと見ると、駅から出なくても行ける公園があった。


改札の向こうに、公園入り口が。
海を見渡せてベンチもある。

帰りは、来た人は皆同じ電車に乗って帰る。観光地なら終点であっても帰る時間は皆まちまちだろうが、ここでは「来たらシンプルに帰る」という特殊な状況。銀河鉄道999が、へんぴな星に止まったときみたいだ。

乗客らにかすかな連帯感みたいなものを勝手に感じた。休日にこんなとこまで来るという共通の目的もあるし。別に帰りの電車で一緒に歌ったりはしないが。

今度は一日で鶴見線全駅降りる偉業を成し遂げたいと思う。


 

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