街中にあふれるいろいろなお店の看板やのれん。基本的には「ここにこういう店があるぞ!」というアピールを目的としたものであるはずだ。
しかし、中にはなんだか読めない字が書かれてる場合もある。一体何なんだと思わず足を止めてしまう。
全然わかんねえ。そのわからなさがエキサイティング。
もうただわかりやすいだけなのは卒業したい頃。その読めなさに「何なんだ!」ともだえたい。そういう視点で看板やのれんを探してみました。
(小野法師丸)
●読めなさの王道・そば屋ののれん
読ませたいはずなのに読めない字を探す。この視点で街を探したとき、最もポピュラーなのはやはりそば屋の看板やのれんだろう。
そば屋ののれんに書いてある字として一般的なこの表記。「生」はたぶん間違いないと思うのだが、ニ文字目がもうさっぱりわからない。
すがすがしくわからないニ文字目に対し、続く三文字目もやっぱりわからないのだが、「む」に似ているのが気になる。点がニつあるのが変だし、仮に「む」だとしてみても、「む」で終わる三文字トータルの言葉がわからない。
のれんを前に思う「生……む?」という気持ち。ああ、ぐっとくる。
同じことが書いてありつつ、右から読ませるパターンもある。いつものように左から読み始めて「む……」と思い、ああ、右からかと思う。軽くだまされたような気持ちになる。
そして右から読んでみても、やっぱりちゃんと読めない。二重にトラップがはられていて、もだえる気持ちも二倍だ。
この看板がそば屋のものだとわかっている人は多いと思うが、それは経験的にこういうのれんがあるとそば屋だと知っているだけであって、読めているかどうかとはまた別なのではないだろうか。
下二文字はこれまで出てきた字なのだろうが、このように応用を利かされるとわからなさに拍車がかかる。少しは手加減してくれ。
ちなみにここに出てきた謎の文字の一部は「変体仮名」と呼ばれるもの。詳しく知りたい場合はこちらのページなどがかなり参考になると思うが、この記事の目的はあくまでもだえることなので答えについては触れない。
また、そば屋シリーズでも別のパターンがある。
「そば」までは確実に読める。そこまでは自信がある。なのに三文字目はなんなんだ。書いてる人が二文字目までで精一杯になってしまって、最後の字がぐちゃぐちゃになってしまったのだろうか。
なにやってんだよ、最後までしっかりやれよ!と思ったりするが、そのつっこみも違うんだろうと思う。
こうしたわかりやすいのれんもある。もちろん確実におそばと書いてあるんだという安心感はあるが、くねくねした字を見続けていると物足りなく感じる気持ちも湧いてくる。
もっと変な字で俺を熱くさせてくれ!…妙な視点で探し続けていると、ちょっとした変態のようにさえなってくる。
新しい書き方や変化球で攻めてこられると、「なにこれ、わかんねえ!」と、血が騒ぐ。わかんないのにうれしい。
そんな高揚した気持ちでのれんをくぐると、なぜだかわからないが「きっと出されるそばもうまいんだろうな」という気持ちになる気がする。もしかしたらそういう戦略的な意図があるのだろうか。
そば屋部門のわかんない大賞をあげたいのがこののれん。個人的には半分以上の字が読めない。ここまでやられると、本当にここはそば屋なのだろうかと疑問も湧いてくる。
わかんない字にはそば屋以外の例もあるので、続いてぐっと来てみよう。