特集 2014年12月22日

今週は冬将軍が息切れします ~あと出し天気予報

驚きの急発達。天気図の歴史に残る一枚になった。
驚きの急発達。天気図の歴史に残る一枚になった。
1週間の天気予報を振り返って当たったかどうかを検証する週1連載。
勝敗とその理由を振り返ります。はたして今週の成績はどうだったのか。

(本連載は振り返りが中心で、詳しい予報は行っていません。予報が見たいかたはウェザーマップなどの専門サイトをどうぞ)
1977年滋賀生まれ。お天気キャスター。的中率、夢の9割をめざす気象予報士です。 好きな言葉は「予報当たりましたね」。株式会社ウェザーマップ所属。
ツイッターでも気象情報やってます。(動画インタビュー)

前の記事:今週は雨と寒波が交互にやってくる あと出し天気予報

> 個人サイト ウェザーマップ・増田雅昭 ツイッター @MasudaMasaaki

5日前から雨を当てた快感!

1週間を振り返る(東京都心周辺) 予報は前日夜にこちら</a>でやってます。
1週間を振り返る(東京都心周辺) 予報は前日夜にこちらでやってます。
先週は、パーフェクト一歩手前。
日曜(21日)もほぼ当たりに近かったが、ツイッターで、「快晴じゃなく、朝から曇ってるんですけど…」と、いくつかご指摘いただいたので、○とは言いづらく△に。

前日の雨によって湿った空気が、雲のもとに。 もっと風があれば、湿った空気を払ってくれて快晴だった。あぁ、おしい。

それより、先週のハイライトは、その前日(20日土曜)の雨。先週の記事に、「土曜は雨」と書いたのが、月曜だったので5日前。 その時点のイメージ通りに雨雲が広がって、イメージ通りの降り方で、イメージ通りの寒さ。
この感動を、どうしても伝えたい!!

ボーリングで、通常の5倍ほど遠いところから投げて、イメージ通りの軌道で、ストライクを取るような快感。冷たい雨が、嬉しくてしようがなかった。

どしゃ降りの冷たい雨だったのに、なにが快感だ!って言われそうだが、そんな雨でも楽しめるのが、気象予報士のお仕事。雨嫌いを克服するのに、おすすめですよ。

ただし、予報がはずれた時は、冷たい雨が死ぬほど嫌いになりますが…。
来週は、今年一年の成績がどうだったかを公表します!
一年間の成績も、ガッツポーズでありますように。
一年間の成績も、ガッツポーズでありますように。

948hPaまで下がりました。名古屋でも大雪に

気象の歴史に残る天気図が、一枚また誕生した。記事のトップ画像を見てもらえれば、すごさが分かってもらえるはず。

列島を通過した低気圧が、猛烈に発達。17日(水)には、948hPaまで気圧が低下した。 24時間で低下した気圧は、なんと58hPa。

一日で24hPa下がっただけで「爆弾低気圧」とか大騒ぎされるのに、その倍以上。 なんと表現したら良いか分からないレベル、と言ったら、それでも天気キャスターかと先輩に怒られた。

この急発達した低気圧が、強い寒気を北から引き込んで、各地で大雪に。 名古屋でも、翌日にかけて23cmの大雪。
まだ冬が始まったばかりの12月中旬に、盆とクリスマスと正月が一気にやってきたような状態。

1月・2月に、記事で書くことがなくて困るんじゃないだろうか、と今からちょっと心配。

じつは、その兆候がさっそく…。

今週は、冬将軍がだんだんレベルダウン

今週も、クリスマス頃までは冬将軍=寒気がやってくる。

ただ、先週より明らかにレベルは下がって、攻め込んでくる範囲も、北海道や東北などが中心。しかも、長居せずに、週後半にはシベリアへ退却。

12月はじめから、さんざん来すぎて、寒気もどうやら息切れ状態。 今週後半は、厳しい寒さではなくなって、日本海側でも雪の降るところが減る。
上空の気温。青色が寒い所。週後半は、寒気が小物になる。
上空の気温。青色が寒い所。週後半は、寒気が小物になる。
と、こう書くと、「今週後半は、暖かくなるんですね」と飛躍してとらえる人が必ず出てきて、うっかり「はい」と答えると痛い目にあうパターン。
すでに冬の寒さになったので、そんな暖かいポカポカ日和は戻ってこない。

「寒くない」と言いすぎると、「どこが暖かいんだ!やっぱり寒いぞ!」と、おしかりをいただく。
なので、遠慮ぎみに「今週後半は、寒さがちょっとマシになります」と、小声で言うようにしておきます。

言葉の微妙なさじ加減も、予報技術の腕のうち。 結果は来週!
今週の格言
『寒気が来たり引いたりするのは、地球の深呼吸。
ひんぱんにやると、息切れする。』

質問コーナー

今回は、先週の低気圧について2ついただきました。

「本日12月17日は低気圧が成長して台風並みになっています。 まさに台風かと思うのですが、こういう低気圧には名前はつかないのでしょうか?」

つかないんです。

昔は、大きな災害となった台風に、「伊勢湾台風」とか名前がついていました

ただ、今回は台風と違って、寒気と暖気がぶつかって発達する「温帯低気圧」(いわゆる普通の低気圧)。 いくら発達しても、名前がつかないんですね。

それどころが、最近は大きな災害をもたらした台風ですら、ネーミングがなく、「○年○号台風」と呼ばれます。 これは、僕たち予報士も「あの時の台風って何号だっけ?」と、番号がパッと出てこないことがあります。

今回の低気圧を名づけるなら、「ゴーヤ低気圧」とかどうでしょう。1日で58hPa下がったので。5と8で、ゴーヤ。すみません、センスのある人お願いします。

「天気図からすると降るとしか思えなかったのですが、降らないばかりか風もそれほど強くありませんでした。まわりの札幌市民みんな不思議がっています。」

風向きがポイントでした。

低気圧のまわりでは、反時計回りに風が吹きます。

今回、低気圧は北海道のすぐ東で発達。 札幌周辺では、おおまかには、北東からの風が吹いていました。
雪雲は海で発達。オホーツク海には、たくさん雪雲がありました。

ところが、雪は札幌より風上側のオホーツク海側で降ってしまい、札幌まで届かなかったんですね。
青い所が雪雲。オホーツク海側の陸が、雪雲をせき止めた。
青い所が雪雲。オホーツク海側の陸が、雪雲をせき止めた。
風も陸上を通っている間に、山など凸凹の摩擦によってブレーキがかかり、結果的にそれほど吹きませんでした。
札幌は、風の流れ的に、北海道の大地のかげになったわけですね。

一方で、札幌は北西から風が吹いてくると、大雪になったり、暴風が吹きやすくなります。
今回も低気圧が、もう少し北に進んでいれば、北西からの風向きに。じつは紙一重だったんです。

ふー、たっぷりと釈明できて、僕もすっきりしました。

詰め天気

先週の問題は、こちらでした。

正解と次の問題は、来週アップします!

追加のヒントは、「朝3時が0.5℃、朝9時が0.2℃。気温が上がってないということは…」です。

解答はこちらから↓
正解は来週!
編集部より:増田さんへの質問を募集しています。
あて先は [email protected] まで
▽デイリーポータルZトップへ

banner.jpg

 

デイリーポータルZのTwitterをフォローすると、あなたのタイムラインに「役には立たないけどなんかいい情報」がとどきます!

→→→  ←←←
ひと段落(広告)

 

デイリーポータルZは、Amazonアソシエイト・プログラムに参加しています。

デイリーポータルZを

 

バックナンバー

バックナンバー

▲デイリーポータルZトップへ バックナンバーいちらんへ