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特集


ロマンの木曜日
 
うなぎを待ちながら
お新香と酒でうなぎを待つ

調理にこだわるうなぎ屋では、注文してから出来上がるまでに相当時間がかかるという。普段、食事にあまり時間をかける習慣がないので、たまにはうなぎをじっくり待ってみるのもいいんじゃないだろうか。粋な食通はうなぎが来るまでお新香をつまみに酒を飲んで待つらしい。

ここはひとつ、粋にうなぎを待ちましょう、江戸の風情で。

(text by 住正徳



世田谷線、松陰神社前駅
創業70年の老舗、一二三
離れに案内されて
座卓の前にあぐらをかく
お新香にビール。これでうなぎを待つ

創業70年。老舗のうなぎ屋へ

今年で創業70年を迎えるうなぎ屋、世田谷区若林の「一二三(ひふみ)」でうなぎを待つ事にした。東急世田谷線、松陰神社駅から徒歩で5分程度。商店街から1本奥に入った路地に店を構えている。

焼き上がりまでの時間を事前に問い合わせると、注文を受けてから活鰻を調理するので、最低でも30分、混んでいる時は1時間以上もかかるという。

「なにしろ安い、旨い、遅い。がモットーですので」

とも言っていた。
「うなぎを待つ」という今回の主旨にはピッタリのお店だ。


夜の営業は16時30分から20時まで。
売り切れてしまう日もあると聞いたので、16時30分ちょうどにお邪魔した。夕飯には少し早い時間だが、待ってる間にお腹も空くだろう。

黒い木製の門をくぐり母屋へ。母屋の内玄関から奥で準備をしていた女将さんに声をかけた。

さすがに一番乗りだったので、離れの個室へ案内してくれた。
摺りガラスの引き戸を引き部屋に入る。広さは8畳ほど。少し古くなった畳の上に、一家族分くらいの座卓が2つ置いてあった。

窓側の座卓の前であぐらを組み、部屋の中を見渡す。
創業70年は伊達じゃない。母屋も離れも、古い日本家屋の雰囲気を存分に残している。NHKの朝ドラ「こころ」の美術スタッフがここを訪れ、舞台美術の参考にしたらしい。

席に着いて少しすると女将さんが入って来たので、うな重の「松」とビール、そしてお新香を注文した。

「うな重にもお新香がつきますけど……」

女将さんがアドバイスをくれたが、そのお新香とは別に、つまみとしてお新香を下さい。お新香をつまみに酒を飲みながらうなぎを待ちたいのです。

「わ、わかりました…」

食通きどりの面倒臭い客だと思われたかもしれない。
それでも女将さんは注文通りに、お新香とビールを持って来てくれた。

かぶ、大根、きゅうり、にんじんのお新香とキンキンに冷えた瓶ビール。
これで、うなぎまでつなぎます。


 

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