ダムが好きで、あちこちに写真を撮りに行ったり見学に行ったりしているけど、大抵は気軽に行けない距離にある。だから、本物のダムが見られないときでも、家の中で好きな時に愛でたりしたい。
そこで、僕が前からほしいと思っていたダムグッズをプレゼンしたいと思う。
(萩原 雅紀)
ダムのグッズがない
3年ほど前、全国にあるダムの写真やスペック、役割などをまとめたトレーディングカード、ダムカードが登場した。現地に行かないと手に入らないこともあって、それまで興味を持っていなかった大勢の人がダムに足を運ぶようになった。
商材としてのダムの魅力の証明である。
しかし、ダムの関連商品と言えば専門家向けの書籍(とダム反対の本)くらいしか見当たらず、今のところダムカード以外に一般のダム好きが楽しめるようなグッズはないと言っていい。
ダムはこんなにかっこいいのに、モチーフとしては放置されている。これは使うしかないではないか。
食玩のミニチュアダムがほしい
僕がいちばんあったらいいと思っているのは、お菓子のおまけでついてくるようなミニチュアである。ダムの。
もうブームは過ぎてしまったかも知れないけど、ミニチュアの造形で有名な会社が作った、動物や乗り物などの超リアルなおまけがついたお菓子があると思う。あの造形力で、ダムもミニチュアにしてほしいのだ。
自宅のテレビや職場の机の上にちょこんと並ぶ小さなダム。ダムにもいろいろな形があるから、これは絶対集めたくなるはずだ。
棚に並んだミニカーを眺めていたら、なんだかダムが重なって見えてきた。とりあえずやってみよう。細かい造形は無理だろうけど、紙粘土で大まかに作ってみることにした。
ミニチュアダムを作ってみる
さっそく紙粘土を買ってきた。あと、展示用の小さいケースも買ったので、これを土台にする。
とは言っても紙粘土で造形なんて小学校のころ以来。出来上がりに自信はまったくないけど、とりあえず粘土を適当な大きさにちぎって、ダムの形を思い出しながらこねてみた。目指すはいちばんのお気に入り、宮ヶ瀬ダム!
作りながら、あらためて立体的なダムの形の複雑さに気づいた。宮ヶ瀬ダムは重力式コンクリートダムという型式で、V字谷に建設されているから、正面から見ると上底が長くて下底が狭い台形だけど、縦の断面は直角三角形で、奥行きは底辺がいちばん広くて上に行くほど薄くなるのだ。
先日、ダムの型式を人体で表現したときはそこまで考えてなかった。
だいたいの形ができたので、水を放流する洪水吐やエレベーター塔などの装飾をつけていく。
初めはおっかなびっくりだった紙粘土の造形も、この頃には粘土の性質やヘラの使い方が何となく分かってきて、想像していたより思い通りに造形できるようになった。こういうの子供のころは苦手だったけど、やっぱりいつの間にか大人になっているものだ。
本体はできたけど、ダムだけだとリアリティーがいまいちなので、ダムが乗っかる地面と、ケースに収まるようにまわりの山も作ってみた。
最後にそれらすべてを合体させると、こんな感じのものができた。
うん、縦と横のバランスは本物と違うけど、シルエットは完全に宮ヶ瀬ダムと言っていいんじゃないか。何度も書くけど、想像よりよっぽどましなものができて、僕はいま猛烈に感動している。
夕ご飯の後から作りはじめてもう夜中だけど、ものすごく楽しくなってきてしまったので、ほかのダムも作ってみることにした。
ただ、本体から作ると大きさのバランスが取れないので、今度はダムが設置される「谷」から先に作ってみた。
どのダムを作るかは決めていたので、実際の場所をイメージしながら地形を作ったところ、この「地形を作る」という作業もやばいくらい楽しかった。神の領域。
上の2つの地形を見て、まさかどのダムを作るか気づく人はいないと思うけど、型式はピンと来る人がいるかも知れない。
そう、狭い谷の方はアーチ型コンクリートダム、広い方は岩を積み上げたロックフィルダムの建設予定地だ。今度は地形に合わせて、大きさやバランスを考えながら本体を作っていく。
薄く、大胆にオーバーハングさせたアーチダムを作るのは興奮する。本物を造る技術者もきっと同じような心境だろうと思う。
全体を見ながらダム本体の造形をできるぶん、地形を先にした方が作りやすかった。歌詞より曲を先に作った方がポップにしやすいのだ。
眠気も吹っ飛ばして粘土をこね、夜が明けるころに3つのダムができあがった。
このままでも満足だけど、やっぱり色を塗りたい。でも僕は色塗りもへたくそだ。せっかくの造形を台無しにする可能性もあるので、乾燥も兼ねてひと晩考えた結果、それでも塗ってみることにした。
そして、翌日の夜からふたたび作業をはじめ、明け方にはこんなものができあがった。
これはかわいいと思う!こんなのシリーズ化されたらぜったい全部買ってしまう。
ちなみに貯水池の水をどうするか考えたけど、愛でたいのは本体なので、水はなくして上流側も全部見えるようにした。
手前味噌だけどこれはよいものができた。うふふ、嬉しいので広告風に解説するよ。
ミニチュアダムシリーズ第一弾
高さ3cm、机上のダムめぐり!
巨大構造物の雄、ダムを精巧にミニチュア化!第一弾は重力式、アーチ式、ロックフィルの各形式を代表するダムをリリース!
どうだろう。こんなの売ってたら思わず買って並べたくならないだろうか。もっと内容を詰めるなら、それぞれのダム両側の山の断面を同じ形にして、横にピッタリ接続できるようにしたい。山を挟んでダム、山を挟んでダム、と続くのだ。
ほかにもこんなダムグッズ
ミニチュア以外にも魅力的なダム商品はたくさんある。たとえばミニチュアをもっと簡略化したストラップ。あの某猫のキャラクターはついてなくていい。
あと、逆にミニチュアよりも精巧かつ巨大なプラモデル。コンクリートのスーパーフラットな感じはプラモデルでこそ表現できると思うのだ。
さらに極めつけはダム管理ゲーム。自分で好きなダムを選んだり作ったりして、そのダムの水をコントロールするのだ。オンラインにすれば実際の天気と連動、台風の夜は各地のダムの管理所とともに、自宅で徹夜の戦いが繰り広げられる。
各メーカーの皆様、どうでしょう。こんな手つかずで奥の深いジャンル、なかなかないと思いますよ。どのくらい需要があるかは分かりませんが、少なくとも僕は全部買うのでぜひご検討ください。
なさそうで、やっぱりない
ダム好きになって以来、こんなのありそうであるわけない、と面白半分でダムの絵はがきやタンブラーシートを作ったりしていた。しかし、最終的な目標だったDVDと写真集を作れることになって、もう商品化できないダムグッズはないんじゃないかと思った。今回提案したものも、数年後には当たり前に売っているものと信じています。