特集 2011年12月12日

美味!猛毒オコゼ 恐怖!巨大ヤシガニ

怪獣みたい
怪獣みたい
沖縄の海と聞いて思い浮かぶレジャーといえば、さんさんと照る太陽の下でのダイビングだろう。きれいなサンゴやかわいいクマノミたちとたわむれるのは大自然を肌で感じることができてそれはそれは楽しい。
しかし、夜の海に出かけてみると昼とはまた違った生き物たちと出会うことができるのだ。
1985年生まれ。生物を五感で楽しむことが生きがい。好きな芸能人は城島茂。(動画インタビュー)

前の記事:スッポンを捕まえよう。そして食べよう。

> 個人サイト 平坂寛のフィールドノート

刺されると死ぬ!?

個人的に夜の沖縄の海で見つかる生き物の代表は「オニダルマオコゼ」という魚だと思っている。
この魚、いかめしい名前に似合って猛毒を持っていることで有名だ。
オニダルマオコゼのはく製。魚とは思えないシルエット。「背びれの毒針に刺されると死ぬかも」「高級魚」という説明がある。
オニダルマオコゼのはく製。魚とは思えないシルエット。「背びれの毒針に刺されると死ぬかも」「高級魚」という説明がある。
死ぬのか。ヤバいな。
そんなこと言われると捕まえたくなっちゃうじゃないか。
しかも高級魚ということはきっとかなり美味しいのだろう。
よし、網とライトを持って夜の海へと繰り出そう。
干潮時を狙って遠浅の海へ
干潮時を狙って遠浅の海へ
水中を照らしながら注意深くオニダルマオコゼを探す。捕まえたいというのももちろんだが、猛毒のオコゼをうっかり踏んづけてしまったら大変なので常に緊張の連続である。

夜の海は生き物のパラダイス!

オコゼを探しているとその他の生き物たちが嫌でも目に飛び込んでくる。
ここからは夜の沖縄の海に暮らす住人たちを紹介していきたい。
テンジクダイの一種。カラフルな縞模様がいかにも熱帯魚といった印象。
テンジクダイの一種。カラフルな縞模様がいかにも熱帯魚といった印象。
エビスダイの仲間。目が大きくて非常にキュート。
エビスダイの仲間。目が大きくて非常にキュート。
水面を照らすとライトに向かって突進してくるサヨリ。
水面を照らすとライトに向かって突進してくるサヨリ。
くちばしの先はなぜか鮮やかなオレンジ色。どういう意味があるのだろうか。オシャレのつもり?
くちばしの先はなぜか鮮やかなオレンジ色。どういう意味があるのだろうか。オシャレのつもり?
こちらはサヨリによく似ているがより大型のダツという魚。
こちらはサヨリによく似ているがより大型のダツという魚。
歯がすごい!
歯がすごい!
これはかまぼこの材料にもなるエソという魚。一見すると地味だが…
これはかまぼこの材料にもなるエソという魚。一見すると地味だが…
よく見ると深海魚みたいな迫力のある顔!目も青くてちょっと怖い。
よく見ると深海魚みたいな迫力のある顔!目も青くてちょっと怖い。
枯葉にそっくりなナンヨウツバメウオの幼魚。尾びれが透明なのがニクいね!水の中では本当に葉っぱが漂っているようにしか見えないのだが、海の中にそうそう枯葉は落ちていないので簡単に正体を見抜かれてしまう間抜けな魚だ。
枯葉にそっくりなナンヨウツバメウオの幼魚。尾びれが透明なのがニクいね!水の中では本当に葉っぱが漂っているようにしか見えないのだが、海の中にそうそう枯葉は落ちていないので簡単に正体を見抜かれてしまう間抜けな魚だ。
魚だけでもざっとこれだけの種類が苦も無く捕まってしまった。うーん、夜の海の豊かさよ。魚の警戒心が強い昼間ではこうはいかないだろう。大人が磯遊びをするなら案外夜の方が楽しいのかもしれない。
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カラフルヒトデとアメフラシ

夜の海で見られる生き物は魚だけではない。
なんじゃこりゃあ!真っ赤なヒトデ!
なんじゃこりゃあ!真っ赤なヒトデ!
かと思えば。
今度は真っ青なヒトデ!
今度は真っ青なヒトデ!
ヒトデまでトロピカルなカラーリングになってしまうとは!恐るべし沖縄。
白いウニを発見。食べられるのだろうか。
白いウニを発見。食べられるのだろうか。
ナマコもあちこちに落ちていた。でも地元の方によると食べられないとのこと。残念。
ナマコもあちこちに落ちていた。でも地元の方によると食べられないとのこと。残念。
コケの生えた石ころにしか見えないカニを発見。うーん、生命の神秘。
コケの生えた石ころにしか見えないカニを発見。うーん、生命の神秘。
なんとタコまで見つかった。模様が独特できれい。ワモンダコという種類だったか。
なんとタコまで見つかった。模様が独特できれい。ワモンダコという種類だったか。
真っ赤なヤドカリ。昼間は探しても見つからないくせに夜の海にはやたらたくさんいた。
真っ赤なヤドカリ。昼間は探しても見つからないくせに夜の海にはやたらたくさんいた。
水の中にうごめく謎の物体を発見。
水の中にうごめく謎の物体を発見。
生き物なのは間違いないのだが、正体がわからない。手のひらに乗せてしばらく観察していると…
うわああああ!何か出てきた!!
うわああああ!何か出てきた!!
威嚇のつもりなのか紫色の汁を出し始めた。どうやらアメフラシの仲間だったようだ。

さて、次から次へと面白い生き物が現れるのでついついそちらをかまってしまいがちだが、今日の本命はオニダルマオコゼである。そろそろ潮が満ちてくる時間帯だが、果たして見つけることは出来るのだろうか。
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発見!猛毒オコゼ!

ここで同行の友人から「いたぞー!」という叫び声が届く。
手に持っていたアメフラシを海中に放り投げ、急いで駆け付けるとそこには!
ついに見つけた!オニダルマオコゼだ!(写真中央)
ついに見つけた!オニダルマオコゼだ!(写真中央)
この写真から、いかにこの魚を見つけるのが難しいか想像がつくと思う。そう、岩にそっくりなのだ。ものすごく注意しながら探さない限り絶対見つからないだろう。
最初で最後のチャンス!慎重に網を入れる。
最初で最後のチャンス!慎重に網を入れる。
しかし、ライトで照らしても写真を撮っても、網を近づけてもまったく逃げようとしない。本物の岩になりきってしまっているようだ。
簡単に捕獲できた。
簡単に捕獲できた。
大きな頭と胸びれにごつごつした体。いかつい。先人が「鬼達磨虎魚」なんて派手な名前をつけたのも納得の外見である。
しかしこの魚、網に入れても相変わらず微動だにしない。
記念撮影中もまったく動かず。
記念撮影中もまったく動かず。
クーラーボックスに放り込んでも暴れる気配すら見せない。我慢強すぎるだろう。
クーラーボックスに放り込んでも暴れる気配すら見せない。我慢強すぎるだろう。
結局、一度も抵抗することなく捕獲されてしまったオコゼくん。どう考えてもアウトだろうという局面に来てもなお岩を演じる役者魂には鬼気迫るものがある。ちょっと暴れれば自慢の毒針で攻撃することもできただろうに、あえてそうしなかった頑なな姿に僕は何か熱いものを感じた。

ヤシガニ登場!

無事にオコゼも捕まえられたことだし、あとは持ち帰って料理するだけだ。しかし、沖縄の夜の海にはもうひとつ忘れてはならない楽しい遊びがある。「ヤシガニ狩り」である。せっかくだし挑戦してみよう。
こういう海岸の岩場がヤシガニポイント。
こういう海岸の岩場がヤシガニポイント。
アダンという木。ヤシガニはこの木の実が大好き。
アダンという木。ヤシガニはこの木の実が大好き。
実はヤシガニ探しで肝心なのはヤシガニの足音を聞きわける耳である。「カサッ」という音が聞こえたらすぐにアダンの藪へ飛びこむのだ。
でもたいていの場合、音の主はオカヤドカリ。
でもたいていの場合、音の主はオカヤドカリ。
オカヤドカリばかりだ。でもまあ、ヤシガニもオカヤドカリの仲間らしいので、きっと探す場所としては間違っていないということだろう。

他にも変わった生き物が飛び出してくる。
日本最大のクモであるオオジョロウグモを発見。でかい。(マウスオーバーでモザイクが外れます)
ホタルまでいた。海辺にホタルというミスマッチ。
ホタルまでいた。海辺にホタルというミスマッチ。
そのとき、アダンの茂みの中からガサガサとひときわ大きな音が聞こえてきた。
こんばんは。
こんばんは。
うわっ、ついに出たなヤシガニ!しかも相当大きいぞ…。
このサイズ!
このサイズ!
なんでも、ヤシガニは地上最大の節足動物らしい。
この青さ!このハサミ!冗談みたいな生き物だ。
この青さ!このハサミ!冗談みたいな生き物だ。
色と言い形と言い、なんかガンダムとかに出てきそうだなー。
ちなみにヤシガニはとんでもなく力が強いのでハサミではさまれると大変なことになる。しかも外見に似合わず動きが素早いので捕まえるのは結構大変だ。
でもこうやってハサミの後ろの脚をつかむとはさまれないよ。覚えておこう!
でもこうやってハサミの後ろの脚をつかむとはさまれないよ。覚えておこう!
一通り観察した後で、また元の藪に返してやった。
ヤシガニもそれなりに美味しく、食用になるそうだが、今回はあえて食べなかった。ヤシガニは成長が遅く、これだけの大きさになるには数十年はかかるらしい。たぶん僕よりも年上だろう。そう思うとなんだか恐れ多くてとても食べてみる気にはならなかったのだ。

それに今回はオコゼもいることだし食材はもういいだろう。
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オニダルマオコゼを食べる

いよいよ持ち帰ったオコゼを料理する時が来た。
さて、どう料理してくれようか。
さて、どう料理してくれようか。
困った。ただでさえ料理は得意ではないのに、こんな岩みたいな変な形の魚どうさばけばよいのか見当もつかない。
背びれの毒針。想像以上に太くて鋭い。
背びれの毒針。想像以上に太くて鋭い。
とりあえず毒針のある背びれを外していく。こうしなければ危なっかしくて料理どころではない。
摘出した毒針。毒さえなければつまようじになりそうだ。
摘出した毒針。毒さえなければつまようじになりそうだ。
地元の方の話だと、このオコゼの毒は熱で分解できるので、手始めにバーナーで背びれを炙ってやると手っ取り早く調理に取り掛かれるとか。さすが沖縄人は料理もワイルドですな。
鱗らしい鱗がない代わりに、なんかコケみたいなものが体中にべっとりついている。
鱗らしい鱗がない代わりに、なんかコケみたいなものが体中にべっとりついている。
これはなんだろうか。まさかあまりにじっとしているせいで本物のコケが生えてしまったのか?気持ちが悪いのでよく洗い落す。
身の皮を剥ぐ。こうして見ると頭ばかりが大きくて、見た目の割に食べられる部分がずいぶん小さいことに気付く。
身の皮を剥ぐ。こうして見ると頭ばかりが大きくて、見た目の割に食べられる部分がずいぶん小さいことに気付く。
剥いだ皮も食べられると聞いていたのだが、湯引きにして味見をしたところ、苦味が強く食べられなかった。処理の仕方が悪かったのだろうか。皮が苦い魚なんて初めて食べたな。
きれいな白身!肝も美味そう!
きれいな白身!肝も美味そう!
なんとか三枚におろして一人前の刺身を取ることができた。
さあ、味はどうか。
うまいっ!!
うまいっ!!
なるほど。あーなるほどなるほど。これはうまいわ。高級魚として珍重されるというのもうなずける。
味は淡白で上品。カワハギに近いような気がする。さらにシャキシャキと歯ごたえがあるのがいい。これだけ美味しいのなら苦労して捕まえた甲斐があったというものだ。

沖縄に行けば食べられるよ

今回紹介したオニダルマオコゼはわざわざ自分で捕まえなくても、沖縄の市場へ行けば購入することができる。お店によっては料理までしてくれる場合もあるので、食べてみたい人はそういったサービスを利用するのが安全確実でお勧めだ。
どうしても自分で捕まえてみたいという人は海に詳しい人と複数人で安全第一を心掛けて出かけよう。間抜けに見えるが、とても危険な生き物であることは確かなのだから。
ヤシガニトリプルピース!
ヤシガニトリプルピース!
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