特集 2015年2月15日

ペン栽の愉しみ ~あふれ、ぎちぎち、ひたひた~

マステ吊りペン栽のいろいろ
マステ吊りペン栽のいろいろ
押忍。私がペン栽道の家元、きだてです。
皆さん、ペン、立ててますか。

自宅や職場でいつも使っている文房具の保管場所である『ペン立て』を盆栽のように見立て、その枝振りの勢いや鉢・器の美しさ、そして埃をかぶった古びのわびさびなどを鑑賞し、楽しむ遊び。
それが『ペン栽』です。

今回も皆様からの投稿ペン栽が着々と集まっております。
前回分で紹介できなかったものも合わせて、特選ペン栽をご紹介します。
1973年京都生まれ。色物文具愛好家、文具ライター。小学生の頃、勉強も運動も見た目も普通の人間がクラスでちやほやされるにはどうすれば良いかを考え抜いた結果「面白い文具を自慢する」という結論に辿り着き、そのまま今に至る。(動画インタビュー)

前の記事:手が暖かい「こたつペン」を作ってみた

> 個人サイト イロブン Twitter:tech_k

『充実』の美

ペン立てに文房具を立てていくと、必ず行き当たることがあります。
それが『充実』と呼ばれる状態です。
普段使いの文房具を買い足して、ペン立てにあれもこれもと挿していくうちに破裂寸前まで膨れあがったもの。
机の上に転がっている不要物を「とりあえずここに」とペン立てに放り込んでいくうちにとんでもない状態に陥っているもの。
どちらにせよ、満ちあふれる生命力を感じさせる美しいものです。
見よ、文房具とか文房具じゃないものが充ち満ちている。
見よ、文房具とか文房具じゃないものが充ち満ちている。
ペンが増えすぎてファスナーが閉まらなくなったペンケースがペン立てに昇格しました。 #ペン栽

郁恵*フミエ @fumie_happy
ポーチが変形するほどの充実感。溢れ出さんばかりの文房具の力強さ。サプリに象徴される生命力。
さりげなく入ってるゴルフボールが謎ですが、その「使用者にしか意図が分からない謎のもの」を見るのもペン栽の楽しみの一つです。
どう考えてもギチギチになってる原因の大半はこのゴルフボールですが。
ペンが挿さりきってない。この溢れも力強い。
ペンが挿さりきってない。この溢れも力強い。
#ペン栽 体温計刺さっているのはおかしいの? ペン立ては仕事してた時に辞めた方に譲って貰ったもの。耳掻きは手前の水色しましまとピンクのカエル(似た色のシャーペン隣にあるから見えない)

。 @el_candygaly
体温計、ぜんぜんおかしくないです。キッチン・リビングにあるペン立ての約31%は体温計が入っています。(きだて調べ)

するりと隙間に射込まれた耳かき2本も、ペンや体温計の間に空いた余分なスペースを許さない、「満たす覚悟」が見て取れます。
なにより、緑色のペンがもう挿しきれず、完全に中空に浮いてしまっている状態。この「あっ、溢れた!」という躍動感こそが充実ペン立ての醍醐味と言えるでしょう。
ペン立てに空きはなくても、まだ文房具の隙間に立てられます。もっともっと立てていっていただきたい。
文房具の表面張力を信じて。

個人的には、元同僚からいただいたという、ちょっと年季を感じさせる鉢も魅力的です。
まさに静の充実。
まさに静の充実。
姉が工作したもの(ビーズが可愛い)だからひび割れても捨てられない。そして某盤のアンコール演出で客席を埋めた桜。文具も桜も全て「今は使えない」ものしか入っていない。#ペン栽

凌塚 @shinogizuka
先ほど、躍動感こそが充実ペン立ての醍醐味と書きましたが、これはまた一つ、違った意味で充実の美を感じさせてくれる逸品です。
見ているだけで肩幅がきゅっと縮まるような、息を詰めるような緊迫感。
もうこれ以上はもう耳かき一本詰め込めない、エントロピー極大状態であるにも関わらず、漂うこの静謐な空気。

今は使えない文具ばかりが入っている、とのことですが、それもこの静かなイメージの理由かもしれません。
桜の演出も見事です。これは間違いなく達人の域。
ふちまでヒタヒタ。
ふちまでヒタヒタ。
#ペン栽 ペン立てに使っているのは確か海苔の容器だったと思う

本気コリ @honkikori82
これは、またさらに違った方向からの充実ペン栽ですね。
元は海苔の容器だったという鉢と、文房具の高さがほぼ同じ。鉢のふちまでヒタヒタ。
このペン栽もまた躍動感とは逆方向の、静けさが美しい充実ペン栽です。
鉢から取り出しにくいから使用頻度も下がるのか、キャップにうっすらと埃が積もっている辺りも、わびを感じさせます。
一本だけすこし頭を出している鉛筆であえて予定調和的な部分を崩しているのがお見事。

粗野と優美

ペン栽の技術上、同じことをしているのに全く違うペン栽になってしまうものがあります。
例をご覧いただきましょう。
突き出した枝振りも勢いがあっていい。
突き出した枝振りも勢いがあっていい。
作業の合間に手を出してしまったよ #ペン栽

矢野ミチル @yanomichiru
いわゆる、マステ懸崖のペン栽である。(懸崖については、前回ペン栽記事を参照)
勢いよくあちこちに突き出したペンや筆、そしてその一本にひっかけられ鉢から垂れ下がるマスキングテープ。
粗めに切り出した竹の鉢と滑らかなガラスペンの軸の対比、そして謎のスマイルマークマスコットのバランスも絶妙です。
入っているものから、使用者はおそらく美術系の方だと推測できますが、ペン栽からもさすが完成された美を感じます。
工業系マステ懸崖。
工業系マステ懸崖。
それでは文具研究同好会、広報担当のペン裁を。 #ペン栽

文具研究同好会@tusbunguken
対して、以前に学園祭を取材させていただいた東京理科大学文具研究同好会さんのペン栽。
先ほどと同様にマステ懸崖のペン栽なんですが、印象が大きく違うはず。
前の方が円熟味のある優美さのペン栽だとすると、こちらは若く荒々しく精悍なペン栽。あと、マステがいわゆる最近流行りのデコレーション系ではなく、ホームセンターで買える塗装用の元祖マステなのも、いかにも男子学生っぽくていい。

ハリナックス(針無しホッチキス)とマステの双懸崖というかなりテクニカルな作りになっているのは、さすが文具研究同好会、と呻らされました。
しかも、ハリナックスと鉢を同色で揃えることで、ややチープ感のある鉢の存在感をぐっと引き上げるという高等技術まで使っています。
おそるべし、文具研究同好会。


もうひとつ、同系の作品を。
こんなの、もうプロの作品です。
こんなの、もうプロの作品です。
我が家のペン栽。我ながら荒々しく突き刺したチャッカマンがポイント高いと思う。 #ペン栽

オイヌマハルカ @oinumaharuka
同様にロールシールなどを吊った懸崖ペン栽なのですが、ペンにテープ芯を挿すのではなくカラフルなアクセサリーチェーンで吊って、机よりさらに下方へ垂らすという高等技法。
透明の鉢で文房具のカラフルさをダイレクトに出す色味の演出。
女子力満点な雰囲気の中心に、使用者自ら「荒々しく突き刺した」と語るチャッカマンの野蛮な存在感。

どれを取っても、完全にプロのやり口です。上手すぎる。この方、間違いなくプロです。

次からは不定期掲載(たぶん、月一回ぐらい)になりますが、まだまだペン栽、募集しております。
自分の手元にある普段使いのペン立てを写真に撮ってご投稿ください。
家元が、「この人はペン栽のプロだ」とか大げさに褒めます。

Twitterでの投稿は、ハッシュタグ #ペン栽 をつけて。メールの場合は[email protected]へ送って下さい。
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