『懸崖』の美
懸崖とは、盆栽の形のひとつで、樹の先端が鉢のふちより下に垂れ下がったものを言います。
崖にしがみつくように自生する植物の生命力を楽しみます。
で、ペン栽にも懸崖の形があります。
これがペン栽における懸崖。
目立つはさみ,ホチキス,30cm定規2本は前任者からもらったもの.色鉛筆にみえるものはかんざし代わりにしていた箸.リップクリームとか袋の口をとめるやつも入ってるし,ペン立てというより机上小物入れっぽい. #ペン栽
寿 @kotobukixxx 2015年1月19日
鉢から青いホッチキスがこぼれている様子が、さながら流れ落ちる滝のような勢いを感じさせます。
きつきつに文房具が詰まった鉢の静と、そこから溢れ出したホチキスの動。
この静と動が拮抗した緊張感のある構図が素晴らしい。
前面に詰め込まれたふせんが文房具類の目隠しになっているのも奥ゆかしくて美しいです。
これも懸崖ペン栽。
ダブルクリップのハンドルにさらにダブルクリップを噛ませているのは、投稿者が「なんとなくやっちゃった手遊び」でしょうか。
ここからさらに枝が伸びていく、若々しい可能性を感じさせます。
ミニホッチキスに加えて、鉢のふちに挟んだダブルクリップからゼムクリップが垂れ下がっています。
こういう使用者の工夫がにじみ出ているところも鑑賞ポイントです。
こういうのも懸崖。用途不明の怪しさがたまらない。
それにしても、鉢のあちこちから溢れ垂れ下がった、これだけあって何に使うんだというピンセットの数々。
投稿者は耳かきについて言及されていますが、見ている我々からすると語って欲しいのはそこじゃない。
普通、これだけ筆やデザインナイフが野放図に飛び出していると、ペン栽がいささか荒れた印象になりがち。
ですが、このピンセットのおかげで全体の雰囲気が見事にまとまっています。
この方、かなりペン栽の上級者ですね。全体の作りに技術を感じます。
鉢のふちを彩る
懸崖と形は似ていますが、鉢のふちに筆記具のクリップをひっかけたものを特に「ふち飾り」と呼びます。
美しいふち飾りの例。
基本的にふち飾りは、この方のように「ペン立てが深すぎてペンが取りづらいから」という理由で形成されます。
彩りの主軸であるゼブラの蛍光マーカーをきちんとスペクトル順に並べているあたり、投稿者の几帳面さが見えます。
また、鉢の中心をあえて埋めず、フチ子ひとりで空間を保たせる構成力はお見事と言うしかありません。
ふち飾り、外側バージョン。
先ほどのふち飾りがクリップを鉢の外に出しているのに対して、こちらはペン軸が外側に出ているものです。
鉢は若干高めですが、それより「入りきらない」という理由で鉢の模様を完全に覆い隠すようにペンがびっしりと。かなりの好き者と見ました。
つい最近発売されたばかりのサラサ×チュッパチャップスコラボペンがすでに何本も配置されているところからも、好き者具合が感じられます。
あまりに好きすぎて、鉢の容量をまったく考えずにブッ挿していった結果、挿しきれずに溢れているペン。投稿者の文房具愛も大幅に溢れています。
バビロンの空中庭園
世界七不思議であるバビロンの空中庭園もかくや、という、机面を離れたペン栽も楽しいものです。
ガムテによる空中ペン栽。
ガムテびっちり貼りで宙に浮いたペン栽。
しかも鉢、これペットボトルを切ったものではないでしょうか。
自分の使いやすさを手元にあるものだけで達成しようとし、さらに頑健さまで求めた結果が、この実用の美。
さらにガムテでフックを貼り付けてハサミを吊るというテクニックも実用一点張りの力強さで感涙ものです。
まだまだペン栽、募集しております。
自分の手元にある普段使いのペン立てを写真に撮ってご投稿ください。家元ががっつり褒めていきます。
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