特集 2012年6月6日

究極の夜行バス・コクーンに乗った

未来感に押しつぶされそう
未来感に押しつぶされそう
夜10時まで東京で仕事をして、翌朝8時に京都の街中に集合、という用事があった。最終の新幹線には間に合わないし、始発の新幹線に乗っても間に合わない。

となると、マイカー以外の選択肢はいま夜行バスしかない。

そこで、夜行バスについて調べていたら、現時点で進化の最先端にいる、と思われるバスを見つけた。こんなインパクトのあるバス、見たことない!
1974年東京生まれ。最近、史上初と思う「ダムライター」を名乗りはじめましたが特になにも変化はありません。著書に写真集「ダム」「車両基地」など。
(動画インタビュー)

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夜の新宿西口は夜行バスのメッカ

仕事を終え、バスの出発地である新宿駅西口に向かった。この時間の西口エリア、特にスバルビルの前あたり一帯は、各地に出発するツアーバスと、そのバスに乗り込む乗客たちでごった返している。
新宿西口
新宿西口
観光バスもロケバスも集合はスバルビル前が多い
観光バスもロケバスも集合はスバルビル前が多い
ぜんぜんごった返してなかった
ぜんぜんごった返してなかった
いや、実はこの3日前にもここから夜行バスに乗っていて、そのときは週末、しかももっと遅い時間だったので車道には各地に出発する色とりどりのバスが並び、歩道は乗客たちで埋め尽くされていたのだ。
でもこの日も各地に向かう便が停まっていた
でもこの日も各地に向かう便が停まっていた
夜中に移動してるバスがこんなにあるというのも驚きだ
夜中に移動してるバスがこんなにあるというのも驚きだ
夜行列車がほとんど絶滅しかかっている現在、夜行バスを題材にした演歌がそろそろ出てくるのではないか。

僕の目的のバスはこの少し先、住友ビルの下から出るという。写真を撮っていたら、出発時刻の15分前であるチェックイン締切に遅れそうになったので急いだ。
西口のシンボル、コクーンタワー
西口のシンボル、コクーンタワー
バスターミナルのある住友ビル
バスターミナルのある住友ビル
予約をしたときにメールで届いた地図を見て住友ビルの中に入ると、1Fの一番奥はチェックインカウンターと待合室、そしてバスの搭乗口になっていた。

バスで搭乗口なんて大げさな、と思うかも知れないけど、見た目もシステムも、飛行機のそれとまったく変わらないものだった。ここに関して言えば演歌が入り込む余地はない。だいぶ気分が高まった。
かなり広いチェックインカウンターと待合室
かなり広いチェックインカウンターと待合室
携帯メールのバーコードをかざすとチェックインとなりチケットがもらえる
携帯メールのバーコードをかざすとチェックインとなりチケットがもらえる
待合室にはこんなわくわくするものが
待合室にはこんなわくわくするものが
やがて時間がやって来て、僕の乗るバスが案内された。飛行機と違うのは、搭乗ゲートを過ぎたあと、隣の敷地に停まっているバスまで外を歩いて行かなければならないこと。ここまでのシステムから見て、この搭乗ゲートのすぐ外にバスを付けてくれたら盛り上がりも最高潮なのに、と少し残念。
これも空港にあるのと同じものだと思う
これも空港にあるのと同じものだと思う
チケットのバーコードかざしてゲート通るのも空港と一緒!
チケットのバーコードかざしてゲート通るのも空港と一緒!
ほかのお客さんたちの後を追って歩いて行くと、ピンク色のバスが何台か停まっているのが見えた。その中の1台が、僕がこれから乗り込む京都駅経由大阪駅行きだ。
夜行バスにピンク色というミスマッチ感
夜行バスにピンク色というミスマッチ感
さっそく乗り込むと、中は衝撃的な光景だった。
およそバスとはかけ離れた内部
およそバスとはかけ離れた内部

出発!

バスの中は両側に1列ずつ、ひとつひとつパーテーションで区切られたシートが並び、ほとんど個室と言っていい状態だった。しかもそれぞれのシートは進行方向に対して微妙に斜めにセットされているので、背もたれを思い切り倒しても後ろの人に干渉しないのだ。

このシートは「コクーン」と呼ばれていて、ほぼ完全に独立した空間をバスの中に作り出している。

これはすごい。そしてかっこいい。
パーテーションも高く、ほとんど個室と言える
パーテーションも高く、ほとんど個室と言える
シートに腰を下ろす、というより、ブースに身体を滑り込ませる、といった感じで座ると、両側の壁が高くて、周りの人や通路を歩く人がほとんど気にならなくなる。後ろの人を気にせず倒せるシートも快適で、いままで観光バスタイプで寝られなかった神経質な人でも、これなら確実に眠りにつけると思う。
座ったイメージはまるで満喫
座ったイメージはまるで満喫
シートの前には小さなテーブル、そしてモニタも設置されていた。テレビや映画が見られるらしい。まるで漫画のない満喫のようである。テーブルの方はとても狭く、ノートパソコンすら置けないほどだった。
MacbookAirでさえ横向きに置けない狭さ
MacbookAirでさえ横向きに置けない狭さ
しかしそれ以上に、ひとりあたりのブースの狭さがすごかった。手荷物で持ち込んだリュックサックの置き場がないほどなのだ(結局網棚に置いた)。足元も、身長164cmの僕でも少し狭く感じたほどなので、大柄な人はそうとうきついかも知れない。

僕は狭いところ好きなので、むしろ興奮して寝つけないんじゃないかと思った。
小さな鞄すら置くスページがない
小さな鞄すら置くスページがない
そうこうしているうちに、バスは西に向けて出発。僕もシートを倒して寝に入った。

けれど最初の休憩まで寝つくことができなかった。バスなのか満喫なのか、なんだかやっぱり環境が違いすぎるのかも知れない。
夜中の高速道路SAの雰囲気っていいよね
夜中の高速道路SAの雰囲気っていいよね
同じように西に向かうバスが何台もいた
同じように西に向かうバスが何台もいた
SAでの休憩を終え、再びバスは発車。明日も忙しいのに寝られなかったらどうしよう、やっぱりこんな変わったバスじゃなくてふつうの3列シートにすればよかったかな、寝つけないと焦ってさらに寝...ぐぅ。

次に気がついたのは、もうすぐ京都駅に着くというアナウンスが流れたときだった。すごく寝た!

その間にも休憩が2回あったはずだけど、まったく気がつかなかった。そのくらい熟睡できていたのだろう。
京都駅に着く寸前まで熟睡していた
京都駅に着く寸前まで熟睡していた
少し名残惜しくバスを降り、僕は用事の場所に向かった。夜行バス降りたとき独特の身体の痛さや重さもほとんどなく、1日用事をこなすことができた。

夜行バスに乗る機会はそれほど多くないと思うけど、たまに乗るときくらいなら、料金が少し高めのコクーンを選んでも贅沢ではないと思う。
そして同じくらいの時刻に全国から夜行バスがやってきた
そして同じくらいの時刻に全国から夜行バスがやってきた

さようなら夜行列車

全国的に夜行列車がどんどん消えて夜行バスが蔓延ってきたとき、夜行列車は個室を増やしていけば巻き返せる!と思っていた。やや料金が高めでも、人目を気にしない個室で、横になって移動できるというのは列車にしかないアドバンテージだったのだ。

でも、コクーンはバスなのに、必要最小限な個室を実現してしまっている。列車に比べて料金も安いし、このバスの登場は夜行列車にトドメを刺すことになったと思う。こうなったら、世の中のすべての夜行バスをコクーンにしてもらいたい。
運転手さんは2人体制で安心
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