コンビニに入っていちばん先にチェックするのは本棚である。
雑誌の棚ではなく、その脇の単行本をおいてある棚だ。コンビニだけで売っている500円の単行本が並んでいる。
あの500円本が大好きで目につくものを買っていたら、いつのまにか家に70冊以上あった。
コンビニ500円本の魅力を紹介したい。(林 雄司)
まずはオーソドックスな実用書
お金持ちになりたい、クヨクヨ悩まないようになりたい、運が良くなりたい。そんなストレートすぎる欲望をターゲットにした本である。ネットでもよく見かけるライフハックと同じでつい手に取ってしまう。
「大人の時短力」には手っ取り早く外国語を習得するコツとして、インドネシア語や韓国語がおすすめと書いてあった。文法が日本語と同じだから憶えやすいのだそうだ。 その言語が必要かどうかという視点ではなく考えているのが新しい。パラダイムシフトである。
「ツキぐいぐい引き寄せる方法」(なんて素晴らしいタイトル!)は幸運グッズやジンクスの紹介が主であった。開運グッズのなかには「ダルマ」があった。トリッキーなテクニックを期待していたのにそんな基本的なところを紹介されると思わずすいませんと言いたくなる。
きっかけは地図本
コンビニ500円本を買うようになったのは地図本からだと思う。
青春出版社の「世界で一番おもしろい地図帳」はコンビニ本のなかでベストセラーだったらしく、続編が次々と出ていた。地図をテーマにした本のみならず、自然科学をテーマにした本も「脳の地図帳」「宇宙の地図帳」など地図帳というタイトルになっていたのは500円本マニアのあいだ(= 僕)では記憶に新しい。
もうひとつの大きなテーマ「ウラ」
ウラ事情、ウラ話と言われるとつい手に取ってしまう。自分の知らないところでおもしろい話があったら損ではないか。
そういう煩悩まみれの発想が根底にあるが、載ってるのは「ペキンダックの皮以外はどうしてる?→別の料理に使ってます」というウラのわりに正しい話だったりする。
このなかでは極道のウラ知識が面白くてこの筆者の本を買い集めて読んでしまった。最近手に入れた「銀座ママが教える できる男できない男 の見分け方」も記念硬貨で飲みに来る男はだめと切ないことが書いてあって清々しい読後感であった。
ノンジャンルにも程がある
そしてどのカテゴリにも収まらない500円本である。相対性理論から地獄まで。500円本が本領を発揮するフリーダムだ。
コンビニエンスストア(便利な店って意味だ)にこういう本がしれっとおいてあるのは相当面白いことなのではないだろうか。そして見たら絶対買う。
昭和初期の新聞には、犬が交番に落とし物を届けた話や屁の匂いが原因で離縁の裁判が起きたという話が載っていたそうである(「日本猟奇史」という本に載ってた。おなじみの国書刊行会刊)。
むかしはわくわくする話が簡単に手に入って羨ましいと思ったのだが、いまはコンビニ500円本にそういう話が詰まってる。
以下は読んでいて身震いした本である。
いまコンビニはスイーツが本格的になっていたり、ネットで予約したチケットを受け取れたり先進的で快適なサービスが充実している。
その横で地獄とか海賊の本が並んでいるのだからどきどきする。この猥雑さが500円で手に入るんだから買うのが当然と言えよう。
500円本は一期一会
コンビニ500円本はあっという間になくなることが多いので気になったらすぐ買うようにしている。一期一会の姿勢が大事である。
ふだん行かないコンビニに行くと珍しい本があるので、遠出したときにはその地域のコンビニの本棚をチェックしている。北海道のセイコーマートや沖縄のファミリーマートには見たこともない500円本があるのではないかと夢想している。
ああ、500円本を集める旅がしたい。