特集 2011年8月17日

青森でかいものめぐり

スケール感が歪む
スケール感が歪む
青森県の津軽地方には「やたらでかいもの」が幾つか点在する。
津軽地方の青森県民はどうやら巨大なものが好きなようなのだ。そんな津軽の「やたらでかいもの」を見てまわってみた。
鳥取県出身。東京都中央区在住。フリーライター(自称)。境界や境目がとてもきになる。尊敬する人はバッハ。(動画インタビュー)

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やたらでかい田舎館村の田んぼアート

まず最初に向かったのは田舎館村の「田んぼアート」だ。

「田んぼアート」とは、田舎館村が1993年から行っているイベントで、色の違う稲を植えて、田んぼに巨大な絵を描くという試みだ。

現在では、日本各地で同じようなイベントが行われているけれど、元々はこの田舎館村の田んぼアートが最初なのだ。

だだっぴろい津軽平野を車で駆け抜け、田舎館村へ近づくと、村の集落の中に明らかにテンションのおかしい建物が見え始める。
あれ?
あれ?
あ、天守閣だ!
あ、天守閣だ!
実はこのお城風の建物は村役場で、天守閣部分が展望台になっているのだ。田舎の金持ちの屋敷みたいな建物だけれど、あくまで村役場だ。

田んぼアートは、この村役場の展望台から眺望できるようになっている。さっそく展望台に登ってみた。

稲への価値観が揺らぐ

巨大すぎてカメラに収まらない
巨大すぎてカメラに収まらない
順番をしばらく待った後、天守閣のバルコニーにでると眼下には巨大な地上絵がひろがる!
おじいさんとおばあさんももちろんでかい
おじいさんとおばあさんももちろんでかい
月へ帰るかぐや姫
月へ帰るかぐや姫
これ全部、稲だ。

稲ってこんなにカラフルだったっけ? という気もするが、これは古代米の稲や、観賞用の稲をうまく組み合わせて作っているらしい。よく見ると、確かに紫色や赤色の稲もある。

これだけきれいな絵が描けるのならば、もう稲は画材といってもいいかもしれない。鉛筆、絵の具、稲。

近くで見てもかなりの迫力

今度は、展望台から降りて、稲に近づいて見てみた。
紛れもなく稲
紛れもなく稲
衣のたわみの部分
衣のたわみの部分
近づいてみるとさすがに何が描かれているのか分からないけれど、先程展望台から見た絵を踏まえて鑑賞すると、あそこの部分があれか! という発見があり、なかなか面白い。
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完成度の高さがすごい

展望台の下には過去の田んぼアート作品が飾られているのだけど、よく見ると年を経るに従って、作品の完成度がどんどん向上してきているのが面白い。
2004年 棟方志功
2004年 棟方志功
2006年 風神雷神図
2006年 風神雷神図
2008年 恵比寿様と大黒様
2008年 恵比寿様と大黒様
2010年 弁慶と牛若丸
2010年 弁慶と牛若丸
下の文字なども、最初はなんだか中学生が美術の時間にやりましたみたいなレタリングだったのが、いまやかなり堂々として綺麗なフォントになっているのが素晴らしい。

実は歪んで描かれている

この田んぼアートは、天守閣風の展望台から眺めて歪まないように、遠近法を使って描かれている。したがって、上空から眺めるとかなり歪んでいる。
ちょっと怖い
ちょっと怖い
これが↓こうなるのだ。
うーん。不思議!
うーん。不思議!
ちなみに、GoogleMapで田舎館村役場を見てみるとこんなことになっている。
GoogleMapの写真は、おそらく、2009年の写真だ。この年の田んぼアートは戦国武将(直江兼続)とナポレオンだったらしい。その時の様子はこちら→田舎館村(リンク

田んぼアートの近くにある世界地図はなんなのか?

ところで、この田舎館村の田んぼアートをGoogleMapで調べていると、へんな池があるのに気づいた。それがこれだ。
これ、どうみても世界地図……。本当にこの大きさで世界地図ならこれも田んぼアートに匹敵するでかさになるのではないだろうか? そんなに遠くないので行ってみた。
世界の稲ほ場?
世界の稲ほ場?
しかし、現場に到着しても、世界地図らしき池は見当たらない……たしかこの池のはずなんだけど。
なんにもない……
なんにもない……
なんにもない……。今はやってないのか。

あとで、近くにある道の駅に電話して聞いてみたところ、たしかに2年ほど前まで、水草を世界地図の形にして植えては居たけれど、今はもう止めてしまって、もち米を作ってますとのことだった。
うーん、やたらでかい世界地図、この目で見たかった……。
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やたらでかい遮光器土偶の駅

続いて訪ねたのは、JR五能線の木造駅だ。駅名を聞いただけでピンとくるひとも多いかもしれない。また、当サイトでも過去に木造駅をかなりしつこくレポートしたこともあるのでご存知の方も多いと思う。そう、遮光器土偶の駅舎だ。
あ、違和感
あ、違和感
ずーん
ずーん
ずーんずーん
ずーんずーん
ずずずーん
ずずずーん
ずどーん!
ずどーん!
ひなびた街に、この大きさの土偶はどう考えても何か間違っているような気がする。
しかし、この違和感を練って焼き固めたような駅舎に近づくにつれ、実は間違っているのはこちら側ではないかと思ってしまうほどの説得力が、木造駅にはある。よく分からないけれど。
ここまで近寄ると何がなんだかわからない
ここまで近寄ると何がなんだかわからない

昔は目が光ってた

待合室では高校生が列車を待っていた。微妙な距離感
待合室では高校生が列車を待っていた。微妙な距離感
木造駅について、地元のひと何人かに話を聞いてみたけれど「ふるさと創生1億円で作った」「昔は列車が到着すると目が光ったけれど、子供が泣くからやめた」というトリビアが必ず出てくる。というか、木造駅に関してはそれぐらいしか情報がでてこない。
目の光る遮光器土偶はそれほどまでにインパクトがあったんだろう……もう見られないというのが実に残念だ。

やたらでかい五所川原の立佞武多(たちねぷた)

次は五所川原の立佞武多を紹介したいと思う。青森の夏祭りでは「ねぶた」や「ねぷた」とよばれる巨大な灯篭を作って、街中を踊りながら練り歩くのがスタンダードな形だけれども、五所川原のねぷたはその中でも、とても巨大なのだ。
お祭りの無い日はこうやって駅の横の格納倉庫に入っている
お祭りの無い日はこうやって駅の横の格納倉庫に入っている
夜、お祭りが始まると、駅前の格納倉庫や「立佞武多の館」など、普段ねぷたが仕舞ってあるところから次々と出陣し始める。
ビルよりでかい!
ビルよりでかい!
このでかさのねぷたを運行させるため、電柱を取っ払った
このでかさのねぷたを運行させるため、電柱を取っ払った
うっすら見えるビルや信号と見比べてみてほしい。そのでかさがわかってもらえると思う。エヴァンゲリオンの使徒が五所川原駅前に出現したら、ちょうどコレぐらいの大きさなんじゃないかと思うぐらいでかい。
迫力の塊、とにかくすごい
迫力の塊、とにかくすごい
「立佞武多の館」に帰る 立佞武多
「立佞武多の館」に帰る 立佞武多
五所川原立佞武多は、元々廃れていた立佞武多のねぷたを1998年に復活させてスタートしたのが始まりだ。

五所川原市は、この祭りのために市街地の電柱を地中化し、見物の邪魔になるアーケードを取り払い、全てを立佞武多のために街をカスタマイズした結果、いまや、青森のねぶた、弘前のねぷたに匹敵する人出を誇る祭りに成長し、年間100万人もの観光客が訪れるようになったという。

なんかここだけ新聞記事みたいな文章になってしまったけど、そういうことらしい。
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やたらでかい大仏、昭和大仏

そして最後に向かったのは、青森市の「昭和大仏」だ。
大仏は日本各地にたくさんあるけれど、大きさで言えば鎌倉の大仏(13.35m)や奈良の大仏(16m)よりもでかい21.35mもあるのだ。さすがに牛久大仏(120m)には負けるものの、青銅製の坐像としては日本一の大きさらしい。
あ、あれってもしかして……。
あ、あれってもしかして……。
やっぱり、昭和大仏だ!
やっぱり、昭和大仏だ!
山の中から頭だけがひょっこり出ている。あれが昭和大仏だ!
静かな木陰の道をすすむと……
静かな木陰の道をすすむと……
あ、あれは
あ、あれは
ずーん
ずーん
ずどーん
ずどーん
で、でかい! たしかにでかい! 一般的に坐像の大仏といえば阿弥陀如来が多いけれど、頭に宝冠をかぶった大日如来はちょっとめずらしい。
凛々しいお顔はちょっとほれちゃうほど男前
凛々しいお顔はちょっとほれちゃうほど男前
さすが、奈良や鎌倉に負けない大きさだけあって存在感は充分だ。しかし、青森にこんなでかい大仏があるってあんまり知られてない。昭和大仏は、存在感があるのに存在感のない、不思議な大仏だ。青森県民はもうちょっと宣伝してもいいと思う。

ご利益たっぷりの境内

昭和大仏は昭和59年開眼の比較的新しい大仏だ。境内には大仏以外にも色々なものがいろいろと置いてある。
願の種類の多様化。幾つか統合しても差し支えないような気もする……
願の種類の多様化。幾つか統合しても差し支えないような気もする……
水子供養の風車は、あなたの知らない世界のイメージカットにしか見えない
水子供養の風車は、あなたの知らない世界のイメージカットにしか見えない
ひとはどうして泉を見るとお金を投げ入れたくなるのか
ひとはどうして泉を見るとお金を投げ入れたくなるのか
元々、先の大戦での犠牲者を慰霊するために建立されたお寺らしいのだけど、今はガン封じやボケよけなどのご利益で有名なお寺らしい。

津軽人はでかいもの好きだ

あの福山雅治さんも来山してひいたおみくじ!(しかも最近!)矢印の多さがその興奮を物語る
あの福山雅治さんも来山してひいたおみくじ!(しかも最近!)矢印の多さがその興奮を物語る
一般的に青森県民は「寡黙で朴訥」というようなイメージを持たれがちだけれど、実はそんなことは全然なくて、陽気で面白いひとが多い。
とくに雪の降らない時期のはじけっぷりは、ちょっとどうにかなっちゃったんじゃないのかと思うぐらい壊れ気味に感じる部分がある。 青森のそんなちょっと壊れ気味な部分が「やたら巨大なもの」を作らせてしまう原動力になってるんじゃないかとぼくは踏んでいるのだけど、どうだろう?

いずれにせよ、どれも観光地や名物としてそこそこ成功しているのがまた面白い。
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