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ロマンの木曜日
 
アリの形の砂糖を作る
アリ誕生秘話


私は砂糖が好きです。

毎日紅茶をガブのみするため、一週間に1kgの上白糖が消費されてゆきます。

1年前に「脂肪肝」と診断されたときは周囲がウケていました。酒が飲めない私に考えられる原因はただひとつ。「糖分の摂りすぎ」だからです。

これはまずい。
たしかに私の腹は異常なほど膨れていますが、これがぜんぶ内蔵脂肪だったとは……。

あの日からかれこれ1年が過ぎたわけですが、ついにこの砂糖漬けの日々から脱する秘策をあみだしました。

(text by 土屋 遊



もしも砂糖がみんなアリの形をしていたら……

脂肪肝宣告を受けたあの日からも、魅惑の白さには勝てない日々が続いていました。

いつものようにコーヒーに砂糖をドバドバ入れていた時のことです。

あと一杯。
入れるか入れないか。

スプーンですくった大量の砂糖を悩ましく眺めていたら、つつましく光る砂糖の結晶がひとつひとつ愛おしく思えてきます。 そこでいきなり、幻覚のような妄想のような映像が見えてきました。

「これがぜんぶアリだったらどうしよう……」

悩みすぎて気でも狂ったのでしょうか。

たしかにこれがみんなアリンコだったなら、砂糖もやめられるかもしれませんし、幻覚を現実にするべく立ち上がったわけです。

私の、私による、私のためのアリ砂糖制作計画。アリの形の砂糖を作る、そんな超極小プロジェクトがはじまりました。

粉砂糖は1kg用意。おやつにもイケる洗練された甘さ
食紅3パターン。ミドリなら「食緑」って言うのかな

材料選びと色に悩む

とはいっても、お菓子作りはド素人。「アリ砂糖のつくりかた」など、どんなレシピサイトでも料理本にも載ってはいません。

料理よりお菓子ばかり作っている友人ツマさんにイメージのみを伝えてその実行役を依頼。

「ケーキの上にのっかってるサンタクロースのような……甘いヤツ」

それだけで翌日には材料と作り方を教えてくれました。
「アイシング」というそうです。

・粉砂糖
・卵白
・少量の水

それだけです。ただ、そこで問題なのが色。
黒い食用着色料など、見つかりませんでした。

「アリが砂糖だったら!」と幻覚を見たわけですし、最初は白い妄想だったのですが、よりアリに近づくためにはあの黒々としたボディがどうしても不可欠。人間、他人にやらせるとなると欲が出てくるものですね。

友人知人、デイリーライターのべつやくさんと玉置さんにもご助言いただきました。
イカスミは?黒砂糖は?ゴマ?じゃあタコスミ?などといろんな意見がでましたが、けっきょくは「濃い色を混ぜる」という絵の具方式でいくことにしました。

まあ失敗しても、シロアリという奥のテがあります。


粉砂糖に卵白を投入
練り混ぜるのには意外と力が必要でした

3交代で混ぜてできあがったアイシング
色調整をしすぎてどんどん増える着色料……

 

ちょっと青みがかった黒。これでいいや、もう……
まろやかで繊細な甘さに舌鼓

次々と問題が……

苦労の連続……

楽しみだったプロジェクト決行ですが、最初から苦労の連続でした。

まず、粉砂糖と卵白を練り合わせるのにあれだけのパワーが必要だとは……。途中ではアイシングの作り方レシピが間違っているんじゃないかと疑ってかかるものもいます。(私ですが)

つぎは色調整。

メインでくると思わせた「青」。
まったくの役立たずでけっきょく「ミドリ」と「赤」をドバドバ大量投下するハメに合います。しかも事前情報では「黒着色料」などないことになっていましたが、後日あっさりと「カラメル色素」というシロモノがあることを知ることとなります。しかしあの苦労を思うと、やはり今でもこの地球上には黒い着色料など存在しないことにしておきたいです。

ここまでやってこれたのは、きっとつまみぐいのおかげ……。

私はそもそもゴテゴテの着色料お菓子が大好きなんですが、さすがに今日は一日分の危険添加物を摂取したような気がします。まあいいか……。おいしーから。


 

 
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