特集 2014年7月10日

GPSだけで出会えるか

お互いの位置さえ分かれば出会えるのか
お互いの位置さえ分かれば出会えるのか
携帯電話がなかった頃、待合せのためには時間と場所を厳密に決めなきゃいけなかった。

携帯以降、待合せはもっとアバウトに出来るようになった。

そして今はGPSがある。位置情報さえあれば、それだけで出会えるんじゃないか?
1976年茨城県生まれ。地図好き。好きな川跡は藍染川です。(動画インタビュー)

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> 個人サイト ツイッター(@mitsuchi)

GPSで出会えるか、とは

GPSでお互いの位置情報だけはリアルタイムに分かってるけど、それ以外のやり取りは一切できない状態で二人は出会えるか? というのがこの企画の趣旨だ。

具体的にはこんなイメージだ。
自分と相手の位置が分かる
自分と相手の位置が分かる
地図中、上の方の赤い丸が自分の位置、下の青い丸が相手の位置。これがリアルタイムに移り変わって行く。

こんな地図さえあれば、ほかの連絡手段はいっさいとれないとしても出会えるんじゃないか?と思ったのだ。

もともと、待合せはめんどくさいものだった。渋谷ならモヤイ像、岡山なら桃太郎像みたいに、誰でもそこと分かる待ち合わせ場所と時間をきちんと決める必要があった。
岡山駅、桃太郎像
岡山駅、桃太郎像
携帯電話以降は「今どこ?」と聞くことができるようになったけど、今はGPS時代だ。どこ?と相手に聞かなくても、どこにいるかリアルタイムに分かるはずじゃないか。

GPSレーダー、その傾向と対策

自分と相手の位置が分かる地図を、仮にGPSレーダーと呼ぼう。そんなものがあって、それだけで出会うとなったらどんなことが起きるだろうか。ちょっと考えてみた。
赤が自分、青が相手
赤が自分、青が相手
たとえばこんな地図があって、自分の場所が赤い丸、相手が青い丸だとしよう。

相手の方に上回りで行くか、下回りで行くかが当面の問題だ。このまま上回りで行くのが自然だが、最短距離としては下回りのような気もする。自分は上回りを選択したとしよう。
相手は下回りで来た
相手は下回りで来た
しばらくして地図を見ると、なんと相手は下回りで来てる! こりゃ失敗と、自分も下回りのほうに戻る。
相手は逆を考えてた!
相手は逆を考えてた!
すると、相手は相手で、上回りに合わせようとして逆戻りしてた。こういうふうに、もう少しという状況でずっと行きつ戻りつしてしまう、ということが起こるんじゃないかなと思った。

こういう膠着状態を避ける方法の1つは、どちらかがずっと動かないという戦略だ。そうすると1人が2倍動く分時間はかかるけど、まあ確実ではある。自分も相手も動かないことを選んじゃうと膠着するんだけど。

とにかくやってみた

いろんなことが考えられるけど、とにかくそういう仕組みを作って、実際にやってみることにした。

相手は当サイトライターの西村さんが引き受けてくれることになった。西村さんなら地図好きだし、要領もすぐ分かってくれそうだ。
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ルールを決めて、やってみた

前日に西村さんと話して、簡単にルールをきめた。

・当日の13時に、初めてGPSレーダーを見る。そこから開始。
・開始時点は、都営一日乗車券の範囲でどこにいてもいい。
・移動手段はなんでもいい。ただし地下鉄はなるべく使わない。
・お互いの連絡は一切しない。


「都営一日乗車券の範囲」っていうのは西村さんの案だけど、こういうのがさらっと出てくるのはさすがだ。

そして、当日の13時、ぼくはバスに乗って浅草に向かう途中だった。
バスを降りたら、ここはどこだ。三ノ輪?
バスを降りたら、ここはどこだ。三ノ輪?
三ノ輪といえば、都電荒川線の終点のあるところだ。西村さんはどのあたりにいるだろうか。GPSレーダーを見てみた。
自分は青、西村さんは赤。iPhoneの画面キャプチャー。
自分は青、西村さんは赤。iPhoneの画面キャプチャー。
自分は右上の青い丸。ちょうど三ノ輪のあたりにいる。西村さんは赤い丸で、白金台のあたりのようだ。

さて、どうしよう。まずどこにどうやって向かおうか?

この付近だと最寄り駅は地下鉄の三ノ輪駅だ。でも地下鉄だとGPSが効かないのでなるべく乗りたくない。とりあえずバスでJRの駅まで出ることにして、バスを待った。
その頃の西村さんの軌跡。これはバスだ。
その頃の西村さんの軌跡。これはバスだ。
一方その頃、西村さんは魚籃坂のあたりにいた。赤い丸が現在位置で、線は30秒前からの軌跡だ。このスピードだときっとバスだろう。
後で西村さんにもらった自撮り写真。たしかにバス。
後で西村さんにもらった自撮り写真。たしかにバス。
13時10分、バスが来た。JRの西日暮里駅方面に向かうバスだ。
やった!これで近づける。
やった!これで近づける。
バスに乗った後のぼくの軌跡はこんなふう。
やや上の青い丸と線がぼくの軌跡。
やや上の青い丸と線がぼくの軌跡。
西村さんによると、それまでほとんど止まっていた点が急に動き出したのを見て、これはバスだと直感したそうだ。

しかもその経路から、それが「草63」または「草64」という系統のバスだと見抜いたそうだ。とにかくすごい。
あとで見せてもらったバス路線図
あとで見せてもらったバス路線図
西村さんはこんなバス路線図をもって移動していたのだ。素直にすごい。そして13時33分、ぼくの乗ったバスは西日暮里駅に着いた。その時の二人の位置関係はこんなふう。
上の青い丸が自分。下の赤い丸が西村さん。
上の青い丸が自分。下の赤い丸が西村さん。
西村さんはすでに東京駅まで来ている!ということは、あとは山手線のどこかの駅で出会えるだろう。問題は、お互いどの駅で降りるかということだ。
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お互い正しい駅で降りれるか?

山手線で、ぼくは西日暮里駅から南下、西村さんは有楽町駅から北上し、順調に上野付近までやってきた。
お互い隣駅まで近づいた!
お互い隣駅まで近づいた!
青が自分、赤が西村さん。選択としてはぼくが上野で降りて待つというのもあるが、とりあえず御徒町まで進んでみた。
重なった!
重なった!
御徒町駅で二つの円が重なった。ついに出会った!ぼくは御徒町駅で電車を降り、どこかにいるはずの西村さんの姿を探した。
西村さんはどこだ?
西村さんはどこだ?
ところが探してもいない。どこにもいない。いやな予感がする。地図を見てみると、なんと西村さんは御徒町駅を通り過ぎて上野駅にいたのだ。
赤の西村さんが上野駅に。やっぱりね。
赤の西村さんが上野駅に。やっぱりね。
どうしよう。ぼくも上野駅に向かおうか? でも、向こうも同じことを考えてすれ違いになるのは避けたい。

そう思っていたとき、西村さんに動きがあった。明らかに道路に降りて、徒歩で御徒町方面に向かっている。
そう来たか!赤が西村さん。青のぼくも道路に降りて中間地点へ向かう。
そう来たか!赤が西村さん。青のぼくも道路に降りて中間地点へ向かう。
上野アブアブ付近で、地図上は西村さんに出会ったことになった。しかしあたりを見回してもどこにも西村さんはいない。
  どこだ・・
どこだ・・
どこだ・・。あっ。
どこだ・・。あっ。
いた!
いた!
西村さんを発見した! カメラでぼくを撮っている。このとき、13時50分。開始から50分だ。意外と早かったように思う。
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全行程を振り返る

今日の全行程を地図に書いてみた。
今日の行程。青が自分、赤が西村さん。
今日の行程。青が自分、赤が西村さん。
まず自分(青)の移動距離の短さに驚いた。前半バスを待って時間をロスしたり、うっかりして西日暮里駅をバスで通り過ぎて戻ったりしたせいだろう。

対して西村さんはとても効率的に移動している。途中で四谷のほうにワープしたように見えるが、これはじつは六本木から地下鉄日比谷線に乗っていて、GPSが取れなかったためにこんなふうになったみたいだ。

結論としては、GPSさえあれば、他の連絡手段はなくても人は出会える。もっと時間がかかるかと思っていたんだけど、割合問題ないようだ。ただしお互いに地図を見るのが苦手じゃない、という条件がつくと思うけど。

GPSべんり

今回は二人だったけど、3人以上だとどんどん難しくなっていくだろうと思う。まず近い人どうしで出会って、群になってさらに出会えばいいのかな・・。

GPSで現在位置を地図上で見るツールって、自分の場所だけが見えるのが普通だけど、自分に関係する何人かの位置も同時に見えると、こんなふうに便利なんじゃないかなと思いました。
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