特集 2013年7月31日

世界チーズのガレージセールで格安チーズを買って食べる

戦果を報告
戦果を報告
チーズ問屋さんがチーズを特売価格で売り出すガレージセールが近所であったので、おっさん三人でチーズを買いに行った。そして食べた。
鳥取県出身。東京都中央区在住。フリーライター(自称)。境界や境目がとてもきになる。尊敬する人はバッハ。(動画インタビュー)

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チーズは好きだけどそんなに詳しくない男三人が集まった

3人とも、ぽっちゃり、メガネというキャラがカブる
3人とも、ぽっちゃり、メガネというキャラがカブる
勝どきの「世界チーズ商会」にて月に一度、チーズの特売が行われる。というはなしはずいぶん前から聞いていた。

しかし、平日の昼間に行われるということもあり、会社に勤めてたころは気になりつつも行けないでいたのだが、気がつくと平日の昼間でも自由に動ける身分になっていた。

これは行かない手はないと、だれか一緒に行きませんかと呼びかけたところ、ライターのきだてさんと、先日、ガッツポーズワークショップで講師を勤めた鉄人社のキンさんのふたりが名乗りを上げてくれた。

おばちゃんに聞き取り調査

10時販売開始ということで、9時半ごろ現地に行ってみるとすでに数人集まっていた。
まだ人はまばら
まだ人はまばら
事前に「大変な混雑になる」という情報は得ていたものの、30分前でこの程度かとたかをくくっていたところ、時間が近づくにつれあれよあれよと人が増えてきた。
全体的に年齢層は高め
全体的に年齢層は高め
客層は、おばちゃん8割、暇そうなおっさん(自分たち含む)と業者が2割といったところだろうか?

しかし、ひとつ心配なのは、我々は「チーズが好きだ」という勢いだけで来てしまい、実はチーズに関する知識はまったくないということだ。
どんなチーズをどれぐらい買えばいいのか、皆目見当がつかずにいささか不安になってきた。

こういうときはすなおに先人たちの知恵にすがるのが賢明だ。(並んでるおばちゃんにはなしを聞いてみました)
整理券代わりのカゴが配られはじめた
整理券代わりのカゴが配られはじめた
ーーお近くにお住まいなんですか?
「いや、本郷の方からきてるんです」

ーー毎月来られるんですか?
「そうね、毎月というわけじゃないけど、けっこう来てますよ。来て3000円分ぐらい買えば、一ヶ月ぐらい持つわねー」

初めてのガレージセールで、びみょうな不安を感じていた我々も、なるほど一ヶ月分のチーズが3000円で買えるんだと思うと、すこし気持ちが和らいだ。
販売開始を待つチーズたち
販売開始を待つチーズたち
ーーおすすめのチーズはありますか?
「んー、そうねー……おじさんだったかなあ、牧師?の絵が書いてあるチーズ、それがおいしかったわ!」

こっちから聞いておいてこういうのも何なんだが、並んでるおばちゃんも、チーズの名称を覚えているほど詳しいというわけではないらしい。

すると、隣に並んでた別のおばちゃんが「ミモレットがいいわよー、冷蔵庫の左にあるから!」とわりこんで教えてくれた。

ミモレット……たしか昔、森元首相が「干からびたチーズ」と称して話題になったあれだ。

「牧師またはおじさんの絵が描いてあるやつか、冷蔵庫の左にあるミモレット……」我々は呪文のように復唱しつつ販売開始を待った。
チーズだけではなく、生ハムやオリーブオイルなど、イタリア食材も多少ある
チーズだけではなく、生ハムやオリーブオイルなど、イタリア食材も多少ある
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雪崩れ込むおばちゃんたちに気圧される

おばちゃんと情報交換(もらう一方だったけど)をしているうちに、販売開始となった。

警備員のおじさんが「それではどーぞ!」といった瞬間、並んでる人たちがどっとかけ出した。
これが生き馬の目を抜く大都会東京の現実
これが生き馬の目を抜く大都会東京の現実
近寄れない!
近寄れない!
どっとかけ出したかと思うと、チーズが陳列してある商品ケースにひとが群がり、たちまち銀行の取り付け騒ぎみたいになった。昭和のニュース映像である。
カメラもブレる
カメラもブレる

豪胆な心をもちたい

完全にスタートダッシュに遅れてしまった。しかし、ここでチーズを買いそびれるわけにはいかない。覚悟を決めて、おばちゃんの中へとびこむ。
目の前ではきだてさんが果敢にも突撃している
目の前ではきだてさんが果敢にも突撃している
選んでるよゆうはない
選んでるよゆうはない
悠長にチーズをひとつずつ吟味するよゆうなんてぼくには無かったが、中にはこの押し合いへし合いの状況にもかかわらず、店の人に「これどんなチーズですか?」といちいち確認する豪胆な戦国武将みたいなおばちゃんもおり、これには勝てないなと悟った。

手に触れたものをとにかく取る

とにかく現物を見て確認する余裕すらなかったので、手に取れたものをカゴに入れていくという作戦に変更。
でかいゴルゴンゾーラが取れた!
でかいゴルゴンゾーラが取れた!
何も見ずに手を突っ込んで掴んだら、でかいゴルゴンゾーラとレトルトカレーが手に入った。

一方、大学時代アメフトで鍛えたというキンさんはこのような状況でも確実にタックルを重ね、けっこうな戦果を上げていた。
キンさんはカゴが壊れたが、そこそこの戦果を上げていた
キンさんはカゴが壊れたが、そこそこの戦果を上げていた
ガッツポーズといい、チーズのバーゲンセールといい、アメフトの経験がこんなところで役に立つとは意外である。どんな経験がどこで役立つかわからないものである。

おばちゃんはさらにうわてだった

ぼくも何度か突撃するうちに、コツがわかってきた。すき間から身を斜めにして割り込むようにすっと入り、定位置を確保出来ればしめたもの。がしかし、いちいち選ぶよゆうはない。目についたおいしそうなチーズをとりあえずカゴに入れるのがせいいっぱいだ。
こんなもんかな
こんなもんかな
取れなかったチーズをきだてさんやキンさんに取ってもらったりと、友軍の支援を受けながら、なんとかカゴがいっぱいになったので、それぞれ会計に向かう。

会計を待ちながら後ろにならんでるおばちゃんの買ったチーズをすこし見せてもらったところ、きだてさんと同じチーズを買っているにもかかわらず、値札が、きだてさんは200円、おばちゃんは100円と差があることがわかった。
右がおばちゃんのチーズ100円、左がきだてさんのチーズ200円
右がおばちゃんのチーズ100円、左がきだてさんのチーズ200円
おばちゃんの話によると、賞味期限の関係で値段の差がついたんじゃないかしら? ということらしい。

このおばちゃん、買い物上手の国からやってきた買い物上手の妖精じゃないか。すごい、やはり歴戦のつわものは一枚上手であったというべきか。
夏の日の思いで
夏の日の思いで

買ったチーズを見せ合う

近くの公園で、三人が買うことのできたチーズを広げてみた。
壮観な眺め
壮観な眺め
手にチーズの匂いがついたというキンさん、デイリーポータルZでは書けない例え方でその匂いを表現していた
手にチーズの匂いがついたというキンさん、デイリーポータルZでは書けない例え方でその匂いを表現していた
公園で買ったものを見せ合うというのは、子供の頃、駄菓子屋で買ったビックリマンシールを見せ合ったあの感覚に近い。

これだけでも意外と楽しいのだ。

ちなみに、それぞれの買ったものと、トータルの金額は以下のとおり。
3000円~4000円ほどでこんなに買える
3000円~4000円ほどでこんなに買える
ざっと見たところ、全商品ほぼ300円前後で、高いものでも1000円を越えるものはなかった。4000円もあればとなり近所におすそわけできるぐらいの量が買えた。

このままさようならと解散してしまうのももったいないので、せっかく買ったこれらのチーズの幾つかを開封し、みんなで試食してみることにした。
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チーズのうまさと安さに驚愕する

家から持ってきた安いワインと一緒に食べたチーズ
家から持ってきた安いワインと一緒に食べたチーズ
まずは「PRESIDENT」のカマンベールチーズを開ける。
ケーキ感覚でざくざく切っていく
ケーキ感覚でざくざく切っていく
白かびタイプのカマンベールチーズで、これはオーソドックスにワインでいただく。
うめー
うめー
うまい、まずいわけがない。

あとから検索してわかったのだけど、この「プレジデント」というのはけっこう有名なチーズブランドらしい。カマンベールチーズのシェアではフランス国内トップなのだそうだ。

たしかにそう言われてみれば、食べたことのある味だ。

内側のとろけるようなチーズ部分の濃厚な味わいもさもさることながら、外皮の白かび部分のツンとくる酸味とうま味もまたよい。

ここでキンさんがネットで元の値段を検索しはじめた。
これ! すごいですよ!
これ! すごいですよ!
うぉー半額以下だー!
うぉー半額以下だー!
キンさんの検索したチーズの値段を見てみると1190円。ぼくが買ったのは300円なので、半額以下!

部屋におっさん三人の「うおぉー」という重低音が鳴り響いた。

こんなうまいものが300円。

ちょっと卑しいかもしれないけれど、元の値段に比べて半額以下と知ると、うま味が三割ほどアップしたような気がする。

うまくないわけがない

フェタのオリーブオイル漬け
フェタのオリーブオイル漬け
次に食べたのはこのチーズ。フェタチーズという山羊の乳から作られたチーズのオリーブオイル漬けだ。
クラッカーにご登場願う
クラッカーにご登場願う
フェタチーズは山羊や羊の乳を塩水の中で熟成させるので、酸味とともに塩味も強めだ。そのまま食べるのもありだが、ここはイタリア食材コーナーで買ったクラッカーと一緒にいただくことにした。

フェタチーズ独特の酸味やしょっぱさがオリーブオイルでまろやかになっているだけでなく、にんにくなどの香辛料の風味もアクセントがあってよい。
うまいー
うまいー
このチーズは、一般的にサラダに入れて食べることが多いらしいのだけど、クラッカーに載せただけというシンプルな食べ方もじゅうぶんありだ。

どれほどおいしかったのかは、キンさんの顔芸でご判断いただければと思う。

はちみつかけて食べるブーム到来

ところで、ここできだてさんがチーズにはちみつをかけて食べましょうと言い出した。
扱いやすいジェル状はちみつ
扱いやすいジェル状はちみつ
はちみつをチーズにかけて食べるとうまいというのだ。なるほど、チーズにはちみつ。盲点だった、たしかにおいしいかもしれない。

さきほどのフェタチーズにかけてみる。
ニョロ
ニョロ
パクリ
パクリ
うまい
うまい
うまいの表現が、30半ばのおっさんの顔芸だけしかないというのが心苦しいのだが、たしかにこれはいい。

チーズの酸味が程よく中和され、はちみつの甘みとチーズの風味がよく合っている。歯車がうまく噛み合って回転しているようなしっくりくる組み合わせなのだ。

最初に食べたカマンベールチーズにもかけてみる。
ちょっと見苦しい形けど、はちみつかかってます
ちょっと見苦しい形けど、はちみつかかってます
うへー、こりゃうめー
うへー、こりゃうめー
はちみつをかけることによって、チーズの中のうまみの輪郭がよりはっきりするようなきがする。たしかにこれはありだ。

はちみつをかけたチーズは、それだけで味が完結しているので、アルコールがダメでワインと一緒にチーズを食べることができないというひとにもおすすめできる。

一番のアタリチーズがでた

続いて開けたのはこちら、いわゆる青カビチーズというやつだ。
キャステロ ブルーチーズ
キャステロ ブルーチーズ
青カビチーズなので、やはり匂いがすごい。腐る一歩手前というか、どちらかというと腐敗の方に舵をきってるぐらいの匂いはする。
どくとくの強いにおい
どくとくの強いにおい
「匂ってみてくださいよ」とひとに勧めながら、やっぱりデイリーポータルZでは書けないような形容で匂いを表現するキンさん
「匂ってみてくださいよ」とひとに勧めながら、やっぱりデイリーポータルZでは書けないような形容で匂いを表現するキンさん
見た目は(匂いも)凶暴そうではあるが……
見た目は(匂いも)凶暴そうではあるが……
しかし、いくら匂いがきついといっても、ホンオフェだとか、シュールストレミングみたいな本気で臭いところを狙ってる東西両横綱にくらべれば、青カビチーズなんて平幕力士ていどだ。

えいやと一気に口のなかに入れる。
あれ!?
あれ!?
すごい。

これはうま味の塊だ。

電光掲示板で「う・ま・み」と文字がひとつずつ出た後に「うまみ」の文字がペカペカ点滅するような、そんな衝撃があった。
あーん
あーん
食べ方で思いっきりふざけたものの、あまりの味の濃さに「うまい」のリアクションが普通の笑顔になってしまったきだてさん
食べ方で思いっきりふざけたものの、あまりの味の濃さに「うまい」のリアクションが普通の笑顔になってしまったきだてさん
もし日本で発明されていれば「味チーズ」という名前になってたに違いない。それぐらい味の濃いチーズだ。

このキャステロというブランドは、デンマークの青カビチーズで、いままでの青カビチーズよりも刺激が少なく、マイルドな口当たりで人気があるらしい。

すかさずキンさんが元値を検索しはじめた。
普通に買うと750円だった
普通に買うと750円だった
やった! 2つも買ってた! 勝ち組だ!
やった! 2つも買ってた! 勝ち組だ!
元の値段は750円。キンさんは150円で2つ買っていた。なんて運のいいひとなんだろう。
こんな味が濃くてうまいチーズ、2つも食べたらぜったい痛風になると思う。このやろう。

8月はガレージセールありません

残念、8月はガレージセールがない
残念、8月はガレージセールがない
世界チーズのガレージセールは、基本的に毎月開催だが、残念ながら8月は開催がなく、次の開催は9月末だ。

チーズが好きでも嫌いでも結構楽しめるので、サラリーマンは仕事休んでも来たほうがいい。

世界チーズ商会
http://www.sekai-cheese.co.jp/

8月3日、4日はヒカリエで「地図、バレンチノ展」です

今週末、8月3日、4日は渋谷ヒカリエのデイリーポータルZ編集部にて「地図、バレンチノ展」が行われます。

デイリーポータルZきっての地味な記事担当の私、西村まさゆきと、伊藤健史さんの二人展です。

ふたりまとめればすこしぐらいは人が来るんじゃないかというもくろみで二人展です。

私、西村は過去の記事で使用した地図、路線図、なぞなぞ本などの展示、伊藤さんは秘蔵のバレンチノコレクションを展示します。

そしてマニアパレルさんの協力により、東京区章手ぬぐいと、バレンチノTシャツの販売も行います。
「東京区章手ぬぐい」1200円
「東京区章手ぬぐい」1200円
3日、4日は是非皆様お誘い合わせの上、渋谷ヒカリエへどうぞ。
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