特集 2014年1月28日

釣具店で買ったオキアミを食べてみる

おいしそう。魚に食べさせるのがもったいないくらい。
おいしそう。魚に食べさせるのがもったいないくらい。
一般的にオキアミといえば「魚釣りの餌」というイメージが強いように思う。実際、釣具店くらいでしかなかなか見かける機会がない。でもアレ、小エビみたいでおいしそうじゃないか。
1985年生まれ。生物を五感で楽しむことが生きがい。好きな芸能人は城島茂。(動画インタビュー)

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実は普通に食用

だが、エビは十脚目に分類されるのに対してオキアミはオキアミ目という分類群に属す生物である。見た目は似ているが、思ったよりもエビとは縁の遠い存在だ。ちなみにカニは十脚目なので、分類学的にはオキアミよりもカニの方がエビに近縁なのだ。意外。
ちなみにアミ漬けの材料や…
ちなみにアミ漬けの材料や…
「干しアミ」とか「干し小エビ」とか呼ばれるこれの正体は…
「干しアミ」とか「干し小エビ」とか呼ばれるこれの正体は…
オキアミ目ではなく十脚目に属すアキアミなどのエビの一種。オキアミは日本の近海では漁獲されない。
オキアミ目ではなく十脚目に属すアキアミなどのエビの一種。オキアミは日本の近海では漁獲されない。
だがそんな分類学云々は大方の人にとってはただのトリビアに過ぎない。重要なのは味だ。味はエビに似てるのか似てないのか。おいしいのかおいしくないのか。それが一番大事。食べて確かめるしかない。
オキアミってこんなの。エビっぽいけどエビじゃない。
オキアミってこんなの。エビっぽいけどエビじゃない。
…まず初めに白状しておかなくてはならないことがある。実を言うと、オキアミは食材として世界中でごく普通に食べられているし、僕自身そのことは雑学本で読んで知っていた。この企画は成功が約束されたいわゆる出来レースと言える。
ただ、オキアミ料理は日本ではあまり一般的ではないようだし、僕もまだ実際に食べた経験は無いので、試しておこうとふと思い立ったのだ。
チャレンジのきっかけになったのはカップヌードルのエビ。
チャレンジのきっかけになったのはカップヌードルのエビ。
きっかけはカップヌードルだった。
カップヌードルにはフリーズドライの小エビが入っている。僕はあのエビが結構好きで、炒り卵を減らしてその分あれを増量して欲しいと常々思っている。
ちなみに、四角い肉に関しては以前採用されていたカッスカスのひき肉みたいなやつの方が好きだった。
カップヌードルのエビはオキアミに近いサイズ。一体何ていう種類のエビなんだ。
カップヌードルのエビはオキアミに近いサイズ。一体何ていう種類のエビなんだ。
あの小エビとオキアミ。大きさが近いではないか。また、あれほど小さなエビはそこらのスーパーではなかなか売られていない。エビ増しカップヌードルが食べたければオキアミを買ってきて、好きなだけ投入すればいいのではないか。逆に言えばそれしかないのではないか。そう思ったのだ。
すごくいろいろな種類があるが、中には着色などの加工がされていそうなものも…。
すごくいろいろな種類があるが、中には着色などの加工がされていそうなものも…。
というわけで、僕はオキアミを求めて釣具店に走った。
ちなみに還暦の両親が言うには、彼らが学生だった頃にはオキアミはスーパーで、正真正銘の生鮮食品として購入できたという。
それが今やどういうわけかオキアミは食品売り場から姿を消し、釣具屋の冷凍庫に過密気味の集落を作って慎ましく生きているのである。
水揚げ後、そのまま凍らせたオキアミ。こういうプレーンな冷凍オキアミを加工して釣り餌メーカーと食品メーカーは各々の商品を作るらしい。これはブロック状にカットされただけのもの。釣具店で購入。
水揚げ後、そのまま凍らせたオキアミ。こういうプレーンな冷凍オキアミを加工して釣り餌メーカーと食品メーカーは各々の商品を作るらしい。これはブロック状にカットされただけのもの。釣具店で購入。
釣具店の店員さんに「オキアミ、食べてみたいんですけど…」と尋ねると、「釣り餌メーカーによって小分けにパッケージされた商品には着色料や防腐剤など各種の添加剤が入っている場合があるため、食用にはまず適さないでしょう。ただ、無加工の冷凍生オキアミはおそらく食用のものと同一の製品でしょう。人が食べても大きな害は無いでしょうが、やはりおすすめはできないし、責任も持てませんが…。」との返事。つま「余計なもんが入ってなければ食えると思うけど自己責任でな」ということである。
見た目も匂いも新鮮そのもの。おいしそうだ。
見た目も匂いも新鮮そのもの。おいしそうだ。
その後、釣り餌としてオキアミの輸入販売を行っている企業のHPを覗いてみると、確かに釣り餌としてだけでなく、食品としての利用も推奨されていた(レシピを公開しているところも!)。
うん、これはいけるかもしれないな。水揚げ後、そのまま冷凍されたとういうできるだけプレーンなオキアミを1ブロック買って帰った。ちなみに500g近い量で値段は300円もしなかった。この値段は魅力ではないか。

頭と尻尾を取ると一気に量が減る

買ったオキアミは解凍し、内蔵が入っていて水っぽい頭と食感の悪そうな尻尾を取り除いた。頭はまだしも、尻尾は小さいし別に気にしなくても良かったかもしれない。なお、この処理を終えると、パッと見の量がかなり減ってしまい、非常に損をした気分になる。それでもなお普通のエビと比較するとはるかに安上がりなのだが…。
頭と尻尾を取るとかさが激減…。
頭と尻尾を取るとかさが激減…。

カップヌードルのエビとは違う

では早速オキアミを茹でてカップヌードルにちょい足ししてみよう。釣具店で買ったオキアミを。
おお、鮮やか!
おお、鮮やか!
想像以上に彩が豊かになった。
元から入っているエビとは色も形も雰囲気も違ってしまったが、これはこれで新鮮味があってアリだろう。
それに重要なのは味だ。オキアミはあのエビと同等のパフォーマンスを発揮してくれるのか。
あれ。悪くはないけど全然違う…。
あれ。悪くはないけど全然違う…。
口にしてみるとオキアミは確かにエビに近い、というかほぼエビそのものの味でなかなかおいしい。だが、あの謎のエビの代用としては歯ごたえが少し足りないし、味も薄い。それから殻を剥いていないので歯触りも別物だ。決してまずくはないのだが、僕は二度とカップヌードルにオキアミを入れることはないだろうと思った。

素直に調理すればいろんな料理に合う!

しかし、ちょっと待って欲しい。カップヌードルのあの小エビはおそらく何か味付けがなされているはずだし、そもそもフリーズドライなのだから素茹でのオキアミで代用したって食感も味も違うのは当然だ。僕が悪かった。オキアミよ、僕が悪かったのだ。
それに、カップヌードルの中のオキアミは確かにそれなりにおいしかった。光る何かを感じさせた。これはより適した環境に身を置けば、一級の食材に化けるかもしれない。オキアミに合いそうな料理をいくつか作り、そのポテンシャルを測ってみよう。
オキアミ炒飯!
オキアミ炒飯!
とりあえず味はエビと同系統だとわかったので、やはり既存の料理のエビをオキアミに置き換えたメニューがいいだろう。
というわけでオキアミをふんだんに使った炒飯とエビチリに倣ったアミチリ、そしてサクラエビのかき揚げを模したオキアミのかき揚げを作ることにした。
パッと見ではオキアミとはわかるまい。
パッと見ではオキアミとはわかるまい。
かき揚げは野菜を使わずオキアミ100%で。
かき揚げは野菜を使わずオキアミ100%で。
エビチリならぬアミチリ
エビチリならぬアミチリ
自分で作った料理を見せながらこう言うのもなんだが、どれも結構おいしそうだろう。
実際、どれも結構美味しいのだ。やはり基本的には小さなエビの味わいなので、オリジナルの海老料理にごく近い仕上がりである。違いといえば、若干味が薄い点と、小粒な上に殻を剥いていないので、むきエビとは少し食感が異なる点でくらいのものである。食材として十分合格だ。
「フツーにおいしい」という若者言葉がピッタリくるおいしさ。
「フツーにおいしい」という若者言葉がピッタリくるおいしさ。

オキアミ、なかなか優等生でした

素直に食材として扱えば、意外にも優秀だったオキアミ。これだけおいしいのに、エビと比べると格段に手頃な価格のオキアミ。これはまた食卓に登る日も近いかもしれないな、オキアミ。
釣具店で買うかどうかは置いておいて、食材としてのオキアミはもっと見直されてもいいんじゃないだろうか。資源量が豊富で栄養価も高いと生物だとよく聞くし、健康と食糧難が意識されるようになれば、スーパーや鮮魚店にオキアミが並ぶ日がまた来るかもしれない。
オキアミづくしの後に見ると、一番小さな粒のむきエビがとても立派に見えます。
オキアミづくしの後に見ると、一番小さな粒のむきエビがとても立派に見えます。
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