こけし購入
こけしはインターネットで買う事が出来る。
顔が描かれているこけしだとフリマなどでもっと安く手に入るのだろうが、魂が入っているこけしをマトリョーシカに改造するとバチがあたりそうなので、少し高かったがこちらのこけしの白木を買う事にした。
送料込みで¥3150
どうやって作る?
一応、頭の中に設計図はある。
1. こけしを真っ二つに切る。
2. 彫刻刀で円錐状に木をくり抜く。
3. その円錐状の木をこけしの形にする。
4. 1~3の手順で、さらに小さいこけしを作る。
以上だ。
これらの工程が出来たらこけしからマトリョーシカは作れる、と言えるだろう。
頭の中の設計図
この工作記事のポイントは1つのこけしからもう1つのこけしを作る事である。
本当のマトリョーシカが1つの木から出来ているわけではないのに、わざわざ他の木を使わないというルールを設けて難易度を高くし、文字数をかせぐという作戦に出たのだ。
夏休み中の小学生も宿題の自由研究や作文を書く際はこの作戦を真似するといい。では、早速作っていこう。
まずは、真っ二つに切る。
この日はまだまだ8月の初旬。うだるような暑さの中、蚊に刺されながらノコギリでこけしを切断した。
家に届いて数分で真っ二つに切られるこけし
10分程でこの通り
今回の記事で一番ダイナミックな作業だ。
ここからは地味な内職のような作業が続く。
ひたすら彫刻刀で彫り進める
こけしの下半身?を彫り進めていく。
鉛筆で下書きをした黒い部分を彫っていく
彫刻刀を扱うのは中学校以来
2時間一心不乱に彫り続けてこの程度。彫刻刀で彫り進めるのは無理があるか…。
中学時代、机に「BUCK-TICK」と彫刻刀で彫っていた同級生も完成までに何週間もかかっていた。そう。BUCK-TICKもマトリョーシカも簡単には彫れないのだ。
痺れ
いきなり壁にぶち当たった。
2時間彫刻刀を握り続けていたせいで、右手の親指、人差し指、中指が痺れっぱなしなのだ。
ほんのり手の平が赤くなっている。
そしてその痺れは作業が終わって何時間経っても引かなかった。
でも、一晩寝たら治るか。そう信じてこの日は作業を終えた。
翌日…
痺れていた…。どうした!自然治癒力!
嘆いていても仕方がないので、朝から整形外科に行って診てもらった。
「どうされましたか?」と聞かれ、一瞬返答に詰まったものの「日曜大工をしてまして」と説明したらレントゲンをとってくれて2週間分の薬をもらえた。
「こけしからマトリョーシカを作ってまして」と答えていたら別の病院を紹介されていただろう。
ただ単に手の神経が傷付いてたみたいです。
マトリョーシカ作りは痺れとの戦い
彫刻刀はもう持てなくなってしまった…。
「せっかくホームセンターで買ってきたけれど君はもう必要ないんだ。さよなら、彫刻刀。」
引退
復活
ドリルの引き金?を引くと、なぜか手元の電気がつく…。
無駄な機能のような気もするが頼もしいじゃないか!
産業革命
我が家で産業革命が起きた。
彫刻刀だと2時間程かかっていた量をドリルだと10分程度で掘ってしまう。
そんな事がわかると、サボらないわけがない。
なんだかんだあって1週間。作業はたまにやった。
甲子園では毎日熱戦が繰り広げられていた。
今夏は偶然、自分の母校も出場しており、彼らの死闘を観て胸が熱くなった。監督は学生当時の先輩で在学中に何度かお話をしたことがある方だ。
よく調べてみると、高校を卒業後は大学野球で活躍し社会人野球を経験した後に母校の監督になったという。しかも今の私の年齢の時に。
かたや高校球児を引き連れ全国制覇を目指し、かたやチューペットをチューチューしながらクーラーの効いた部屋でゴロゴロ。気が向いたらこけしを掘る。
「自宅警備員でももっと働くぞ!」
この怠惰な生活を監督が見ていたら、そう叱責するかも知れない。
冒頭で日本の民芸の素晴らしさを証明するだのなんだの、と書いてはいるが私に言われなくても日本の民芸は素晴らしいのだ。頑張ってないのは私だけだ。
そんな事を思いながらペースを上げるわけでもなく地道に掘った。人には向き不向きってもんがあるよ、と言い聞かせながら。
そして出来たのがこちら。
図らずも、こけしの形と座布団の形がシンクロした
本当は難航してました
上では結構簡単に掘れたように書いてしまっているがあそこまで掘るのには実は延べ6~7時間はかかっている。
ドリルの太さの深い穴を何個も掘っていき、その穴と穴の間に出来た細い壁の部分をさらにドリルで掘って穴を広げていく、という作業を続けていったのだが、この壁の上の部分にドリルをあてるのがすごく難しかった。
ちゃんとドリルをあてがったとしても歯が回転すれば「この部分」の所からすぐにズレてしまう。ドリルをあてがう→引き金を引く→ドリルが横の穴に落ちる。
これが何度あったかわからない。イライラする作業の時はこけしを放り出して高校野球を横目にふて寝を決めこんだ。
甲子園では球児達が白球を追いかけていた。
話は戻り、次の作業へ
そんなこんなでやっと次の作業へ。この作業は手で真ん中の部分をグリグリして、こけしから「小こけし」を取り出すだけだ。
これは健康な歯を無理矢理引っこ抜くような感覚だった。
グリグリグリグリグリグリグリ……(目が寄ってる)
バキッ!取れた!
こんなん取れたで!!
思い描いていた物とはだいぶ違うものが取れたけど、自分だけはこの木片に愛着すら感じる。これを持ってお散歩に出かけ、たまにポケットから取り出してニヤニヤしたいぐらいだ。
さらに次の作業へ
だが、まだ作業は終わっていない。
これをちゃんと成形し、またこの中から新たにこけしを彫り出すのだ。
これをちゃんと成形し、またこの中から…。
想像しただけでも面倒くさい。
「開けたら人形が1個しか入っていないマトリョーシカがあってもいいじゃん。このままでもかわいいし。」
ドリルはそっと箱にしまった…。
絵付け
半ば強引に絵付け作業、つまり仕上げの作業に入った。
魂を吹き込む
親の方にも魂を吹き込む
ジャーン!!
完成!一応、こけしからマトリョーシカは出来ました。
後で調べてみると…
記事の冒頭で「マトリョーシカはこけしが形を変えてロシアに伝わったもの」という説がある、と書いたが、もう一度よく読んでみると全然違った。
内容はというと、「19世紀末、日本の避暑館にやってきたロシア人修道士が、本国への土産に持ち帰った箱根細工の入れ子人形(こけし・だるま・七福神)がマトリョーシカのもとになったと言われている説がある」と。
元々、入れ子人形というこけしよりもかなりマトリョーシカ寄りの民芸品があるのだ。
この文中の「こけし」「マトリョーシカ」「もとになった」という単語をつなげて頭の中で勝手に文を作ってしまっていたのである。でもやってしまったものはしょうがない。
「こけしからマトリョーシカは出来る事は出来るが大したものではない」というのが今回の結論だ。