特集 2013年8月15日

タイムスクープハンターにかっこよさを学ぶ

いったい、二人の違いはなんなのか!?
いったい、二人の違いはなんなのか!?
沢嶋雄一に会えることになった。タイムスクープハンターの沢嶋雄一である。言い換えるとその役を演じている要潤さんである。

たいへんだ。僕はタイムスクープハンターのファンなのだ。


会ってどうするか迷ったが、「劇場版タイムスクープハンター」を試写会で観て、テレビでは見られない沢嶋雄一の活躍にすっかり感化されてしまった僕は、タイムスクープハンターの姿をして、会いに行くことに決めた。
1986年埼玉生まれ、埼玉育ち。大学ではコミュニケーション論を学ぶ。しかし社会に出るためのコミュニケーション力は養えず悲しむ。インドに行ったことがある。NHKのドラマに出たことがある(エキストラで)。(動画インタビュー)

前の記事:路上ライブと路上占いを無視しない

> 個人サイト Twitter

タイムスクープハンターとは

「タイムスクープハンター」とはタイムスクープ社の時空ジャーナリスト・沢嶋雄一(要潤)が、あらゆる時代にタイムワープして、歴史の教科書に残らない市井の人々の姿を追う、ドキュメンタリー風のドラマである。

史料に基づいたリアルな時代考証はもちろん、おっちょこちょいな町人や、すぐ殺しにかかってくる山賊などの登場人物、ハプニングやサスペンスなどの事件を「沢嶋雄一」という人物を通じて見られるのがこの作品の特徴であり魅力だ。
今回、映画化されるというタイムスクープハンター
今回、映画化されるというタイムスクープハンター

ファンです

NHKで第5シリーズまでやっている人気番組で、特にデイリーポータルZ関係者の視聴率はすごく高い。多分80%超える。そして僕も「タイムスクープハンター」のファンである。

好きが高じて、一度番組に出演したこともある。エキストラとしてだけど。江戸時代の町人の役だったが、僕はメガネを外すと何もみえないので、周りで何が起こっているのかわからなかった。
僕もこうなる。
僕もこうなる。

タイムスクープハンターになろう

そんな折、「劇場版タイムスクープハンター」の試写会に招待して頂き、一足先に映画を見ることができたわけだ。

やはりおもしろかった! 劇場版では、取材する沢嶋雄一の様子が多く盛り込まれていて、テレビ版をベースにしつつも、また違った次元に踏み出しているようにも感じた。

映画が観られただけで満足だったのだが、今回はただの観客として楽しんだだけではなく、沢嶋雄一(要潤)さんにお会いすることになってしまった。

そこでせっかくなのでタイムスクープハンターのスーツを自作して会おうというわけだ。
これからタイムスクープハンターになる男
これからタイムスクープハンターになる男

完成予想図

さて、これから服を作るわけだがその前に。実はタイムスクープハンターに変身することを考えていたら、気分が高まって完成予想図を描いてしまった。

これをゼロから作るの難しいので、出来上がった服からリメイクする形にした。しまむら、ダイソー、古着屋などに行って材料を集めた。
こうなる予定の僕
こうなる予定の僕

スーツを作る

いろいろ悩んで買い物をした。時間だけはたっぷりかけたものの、結局買ってきたのはどれも1000円以下の服やモノ。安っぽくなってしまわないか、とても心配だ。
色がピッタリだった、古着屋で買ってきた女性物の服
色がピッタリだった、古着屋で買ってきた女性物の服
ダイソーで買ったグローブをハサミで切って、指先を出した
ダイソーで買ったグローブをハサミで切って、指先を出した
全体的に色と形だけで選んでいる。上の青いシャツも女性が着る物なので小さく、背中はボタンが閉まっていない。

しかし、時空ジャーナリストが未来との通信に使う「アブソリュートタイムウォッチ」はきちんと機能を持たせたいと思い、こんなモノで代用してみた。
電卓とキッチンタイマー!
電卓とキッチンタイマー!
後は黒いベストと、映画でも重要なアイテムとなる銃をぶら下げて完成だ。
黒い上着の袖を、肩の部分から切る
黒い上着の袖を、肩の部分から切る
黒いガムテームで作ったガンホルダー
黒いガムテームで作ったガンホルダー
完成だ!
完成だ!
あっという間に完成した。主に上着の袖とグローブの先をハサミで切っただけ。

ちなみにゴーグルはオフィシャルのグッズだ。
でもヘッドセットは一番安いタイプのやつ
でもヘッドセットは一番安いタイプのやつ
材料を集めた時点では、残念な感じになってしまうかと危惧していたのだが、意外とかっこよくなった。遠目で見たらタイムスクープハンターのように見えなくもない。

いや、タイムスクープハンターは無理でも、「未来の電器屋の店員」くらいにはなっている。
タイムスクープ
タイムスクープ
ハンター
ハンター

タイムスクープハンター出動

割とよくできた気がするので、ちょっとタイムスクープハンターごっこをしてみよう。
「……西暦変換しますと、2013年8月2日18時48分。無事タイムワープ成功しました。」
「……西暦変換しますと、2013年8月2日18時48分。無事タイムワープ成功しました。」
「これは何をしているところですか。ちょっと触らせてください」
「これは何をしているところですか。ちょっと触らせてください」
「これは……見づらいですね」(メガネはずしたので近視)
「これは……見づらいですね」(メガネはずしたので近視)
「これも見づらいですね」(近視)
「これも見づらいですね」(近視)
エレベーターを待つTSH(見えてない)
エレベーターを待つTSH(見えてない)
近視なのでメガネを外して、ゴーグルを着用すると何も見えないことがわかった。これではエキストラをやったときの二の舞だ。

明日は必ずコンタクトレンズを着用しようと心に決めた。
「この時代の街の様子を見てみましょう」
「この時代の街の様子を見てみましょう」
「この時代の食べ物ですね。ちょっといただけますか」
「この時代の食べ物ですね。ちょっといただけますか」
あつい
あつい
「賑やかですね」
「賑やかですね」
「本部! 何か生まれ出ようとしています」
「本部! 何か生まれ出ようとしています」
ハデな見た目なのに、町中に出てみると意外と馴染んでしまうことがわかった。

もしかしたら、江戸時代に行ってもそんなに奇妙に思われない姿なのか、このスーツは。ほとんど本物じゃないか。
僕と同じかっこうした奴がいる
僕と同じかっこうした奴がいる
わりとよくできたこのコスチュームを実際に要潤さんに見せたら喜んでもらえるかもしれない。可能性は、ゼロじゃない。 テンションが上がってきた。
いったん広告です

ネタがかぶった

そして当日、スタジオに向かうと、そこにはトゥギャッチの取材で来ていたヨッピーさんと加藤さんの二人がいた。

ヨッピーさんは何やら青いかっこうをしている。おや……。

見るからに「タイムスクープハンター沢嶋雄一にタイムスクープハンターの姿で会いに行く」というネタがかぶっているではないか。しかも彼らのほうが奇抜だった。

テンションは地に落ちた。
あっだめだ
あっだめだ
聞くと、順番は彼らが先で、僕らがその直後らしい。僕らが”かぶった後の方”だ。「もうだめだ」と思った。

でもせっかくなので記念に写真を撮らせてもらった。
記念撮影
記念撮影

いよいよタイムスクープハンターと対面

そうこうしている間にヨッピーさんたちがスタジオに入った。

……と思ったら、ヨッピーさんたちは数分でスタジオから出てきた。それも、追い出されたわけではなく、撮影が終わったらしい。仕事が早い!

しかし順番が来てしまったのでしかたがない。というわけで、いきなり要潤さんの登場である。心の準備ができていない!
惚れる
惚れる
すごくかっこいい。

あまりのオーラに緊張して、普段からド無口な僕が、より一層無口になってしまう。どうせ無言なら心なんてなくなってしまえばいいのに、と思いながら憐れにもあふれ出る自意識。

だが、僕だって頑張って作った衣装がある。夜寝付けなくて細かいところのバージョンアップもした。怖気づくことないはずだ! ということで、並んでポーズをとってみた。
タイムスクープハンター 対 偽タイムスクープハンター
タイムスクープハンター 対 偽タイムスクープハンター

全然ちがう

質感が全然違う。前ページの冒頭の写真もこの写真も、右と左で違う場所で撮ったようにさえ見えるが、きちんと並んで同時に撮影したものである。

要潤さんからは俳優としての圧倒的オーラが出ている。 対して僕はベストの丈が足りず、腹からシャツが出ている。

いい線行っていると思っていた自分がバカだった。色味は近いが、ディテールが抜けている。

ここからは呼吸を止めて読んでください

明らかに違うのだが、細かいところがどうなっているか、時空ジャーナリスト沢嶋雄一こと要潤さん本人に見てもらう。

まずはじめに腕の「アブソリュートタイムウォッチ」を見せたところ、「これ、悪意ありますよね」と言われてしまった。
僕はどうしてこんなことを……
僕はどうしてこんなことを……
僕は「いえ、計算機とキッチンタイマーなんで、計算と時間を計ることができるんですよ」と弁解。これでは弁解ではなく、ただの計算機とキッチンタイマーの機能の説明だ。

説明しながら、どうして申し開きもできないのにこんなくだらないものを付けてきてしまったのだろう、と激しく悔やむ。喉がキュッと閉まり、息が止まった。心停止まで残り5分というところだ。

何からなにまで違う

ちなみにこれが本物。スマートフォンのようだ。
ちなみにこれが本物。スマートフォンのようだ。
指抜きグローブの長さも違った
指抜きグローブの長さも違った
息は止まったままだが、気を取り直して他の部分も見てもらう。当たり前なのだが、細かく見ると全然ちがう。素材、縫製、明らかに安っぽさが目立つ。

ヒーローに憧れたファンが、ヒーローごっこをしているようなものだ。フィクションでは、たいていそこに本物の悪役がやってきてファンは痛い目をみるのだが、この日はむしろ悪役がやって来ないことが辛い。
ベストの素材が全然ちがう。
ベストの素材が全然ちがう。
てろてろのインカム。一秒ごとに後悔が増す。
てろてろのインカム。一秒ごとに後悔が増す。
さらに個人的に見せてもらいたかった、「背中」を見せてもらう。

何気ないのだが、テレビで見られる映像は基本的に「沢嶋雄一が自分で持つカメラの映像」という設定なので、背中は映らないのだ。

一体どうなっているのか!
おお、これが……。
おお、これが……。
かっけー……。

背中ですらかっこいい。なんだ、このかっこよさは。ため息が出る。

かっこいいポーズをしてもらう

かっこいいついでに、もうひとつお願いしてみよう。かっこいい要潤さんに「かっこいいポーズ」をやってもらうのだ。

かっこいいポーズ」は僕が作った、自分でも気に入っている動画シリーズだ。それをiPadで見てもらった上で、僕のお手本に従って「かっこいいポーズ」をしてもらう。

かっこいいポーズはかっこいい人がやってこそのものだろう……と思うのだが、そんなこと頼んでもいいのだろうか。
やってもらえるのか。
やってもらえるのか。
「こういうやつなんですけど……かっこいいポーズ!」と自分でやりながら、こんなこと頼んでいいのか申し訳ない。

が、なんと! なんとかやってもらうことができそうだ。ずうずうしいお願いを申し訳ないです。

さあ! これが真のカッコイイポーズだ!
かっこいいポーズ!
かっこいいポーズ!
やってもらえた……。

僕のポーズと比べて、かっこよさに説得力がある。いや、かっこいいということは説得力そのもののことなのかもしれない。

もう思い残すことはない。インタビューとか全然してないが、僕はかっこよさの目撃者なのだ。もうそれだけで十分だ。かっこよさを胸に、家に帰って寝よう。

かっこよさの力

そもそもタイムスクープハンターの「戦国時代に未来のジャーナリストがやってきて取材する」なんていう設定は、一見荒唐無稽なようにも思える。ドキュメンタリーにしては無茶なシーンもいっぱいある。

だが、それがギャグにならず済むのは、僕なんかではとてもマネできない要潤さん演じる沢嶋雄一のかっこよさのおかげなのだ。

これからの時代はおもしろじゃなくてかっこよさである。そう強く実感した。

8月31日(土)公開『劇場版タイムスクープハンター 安土城 最後の1日』公式サイト
腕のコレだけはすぐに捨てておきます。かっこよくないので。
腕のコレだけはすぐに捨てておきます。かっこよくないので。
▽デイリーポータルZトップへ

banner.jpg

 

デイリーポータルZのTwitterをフォローすると、あなたのタイムラインに「役には立たないけどなんかいい情報」がとどきます!

→→→  ←←←
ひと段落(広告)

 

デイリーポータルZは、Amazonアソシエイト・プログラムに参加しています。

デイリーポータルZを

 

バックナンバー

バックナンバー

▲デイリーポータルZトップへ バックナンバーいちらんへ