特集 2015年9月30日

理想のおはぎに出会ったけど、写真を撮り忘れました

理想のおはぎに出会いました。
理想のおはぎに出会いました。
先日秋のお彼岸を終えたばかりですが、ご先祖様におはぎをお供えしたという方は多いことと思います。
もちとも言えぬおにぎりとも言えぬ微妙な存在の物体をあんこで覆ったおはぎ。
あんこと米の織り成す素朴でいながら味わい深いハーモニーは、ご先祖様のみならず生きている我々をも魅了する一品です。
そんなわけでして、生きている私が出会ってしまった理想のおはぎについてご報告します。
1980年北海道生まれ。
気が付くと甘いものばかり食べている偏った食生活を送っています。


前の記事:もろこしヘッドを再現したい


理想のおはぎはここにあった

それは宮城県の秋保(あきう)温泉にある地元志向の小さなスーパー、『主婦の店さいち』にありました。
主婦の店さいち、外観。
主婦の店さいち、外観。
ちょっとしたコンビニくらいの広さのこじんまりした店構えですが、そんな小さなお店で一日平均5,000個、お彼岸の中日には20,000個ものおはぎを販売するという超人気スーパーなのです。
お盆シーズンは開店前から行列が!(画像提供・むぅちゃんママさん)
お盆シーズンは開店前から行列が!(画像提供・むぅちゃんママさん)
秋保温泉の名物として有名で観光客の多くがおはぎを買って帰る、と何度かテレビ等で紹介されているので、『主婦の店さいち』という名前をご存知の方も多いかと思います。
『おはぎの里』のフレーズに期待も高まる。
『おはぎの里』のフレーズに期待も高まる。
お店の名前を知っていても実際におはぎを食べたことが無いという方も多いでしょうし、中には「名物に美味いもの無し」という格言を信じている方もいるかもしれませんが、そんな方々には是非一度食べてほしいと思います。
私自身、まさかこんな遠方で理想のおはぎに出会おうとは思っていませんでした。
これが私の理想のおはぎ、さいちの秋保おはぎだ!
これが私の理想のおはぎ、さいちの秋保おはぎだ!
寄り気味にもう一枚。
寄り気味にもう一枚。
観光ナイズされていない日常的な美味しさで、どこにでもありそうでいて意外と今時そんなに無い、絶妙な素朴さがたまりません。

あと、おはぎは関係ありませんが野菜が全体的に安くて思わず買いたくなりましたが、旅行で来ていることを踏まえて自重しました。
98円の玉ねぎを買おうか悩んだ。
98円の玉ねぎを買おうか悩んだ。

理想のおはぎについて、そして写真を撮り損なった件

美味しい食べ物について語る上で、美味しそうな写真は欠かせないアイテムだと思います。
なのに、おはぎの写真少なすぎだろう。2枚だけ、しかもパックに入った状態かよ!
そう思われる方もいるでしょう。
ですが、私のカメラに残っているおはぎ画像はこの2枚だけです。
「後で、お皿に移してちゃんとした写真を撮ろう」と思いながらひとつ食べたらついつい夢中になって2個食べてしまい、さらに最近食欲が落ちてきたと自己申告する母も2つ食べ、さらに父と妹がひとつずつ食べ、6個入りのおはぎはいつの間にやら無くなっており、写真を残す暇もありませんでした
あまりの早さに、一瞬新手のイリュージョンかと思いました。

そこで、きちんと写真を残している読者の方々からさいちのおはぎ画像をお借りしつつ、私の理想たる理由を語りたいと思います。
1.つぶあんである
そもそも、私はつぶあん派なんです。
原料が豆なのだから本来あんことは粒であるべきなのに、何故敢えてそれを濾したり練ったりしてしまうのか理解に苦しむ程度につぶあん派です。
豆っぽさがよく分かります。(画像提供・うしさん)
豆っぽさがよく分かります。(画像提供・うしさん)
まだ保存技術が発達していなかった頃、収穫直後の秋は小豆が柔らかいのでつぶあんで食べ、豆が乾燥して硬くなってくる春は食べやすいようにこしあんにすることが多かった、という話を聞いたことがありますが、今は保存技術も高いので年中つぶあんで食べるべきだと思います。
こんなことを言うとこしあんが嫌いなのかと思われるでしょうが、こしあんもよく食べます。
2.粒が生きる甘さひかえめの魅力
「甘いものは、甘ければ甘いほどいい」というのが私の持論でしたが、成長なのか老化なのか『素材の良さを生かす』ということが最近になってわかってきました。
さいちのあんこはどちらかといえば塩気が利いていて甘さ控えめなのですが、その控えめな味付けのおかげで、豆の風味を存分に味わえるような気がします。
奥歯が溶けそうに甘いものも大好きですが、豆の良さを感じられる程よい甘さがあんことしてはベストな甘さなのではないか、と感じました。

あと、甘さ控えめなおかげで、ボリュームがあるのに胸焼けせずに一度にふたつ食べることができます。
ふたつくらいならペロリです。 (画像提供・てぃぎーさん)。
ふたつくらいならペロリです。 (画像提供・てぃぎーさん)。
3.あんこがたっぷり使われている
そんな理想的なあんこが、惜しげもなくたっぷりと使われていたら、それはもう理想のおはぎとならざるを得ません。
さいちのおはぎは、あんこをくるっと裏側まであんこを回して作るのがコツだそうで、裏まであんこがかかっています。
裏面までたっぷりのあんこ。(画像提供・imaginegargleさん)
裏面までたっぷりのあんこ。(画像提供・imaginegargleさん)
さいちの社長である佐藤啓二氏の著作に、あんこが全体にかかっておらず下の方の米が見えているおはぎが売られていたので製造担当者に「うちのおはぎは寿司じゃない」と注意した、という感じのエピソードが載っていましたが、いいセリフだなーと思いました。
これからの人生で、あんこ少な目のおはぎを見る度に思い出すことでしょう。
4.ごまおはぎも美味しい
こんなにさんざんあんこが美味しいと言っておきながらアレなんですけど、ごまおはぎもお勧めです。
パックに入ったごまおはぎ。(画像提供・Atsukoさん)
パックに入ったごまおはぎ。(画像提供・Atsukoさん)
一般的なごまおはぎは、表面に薄くごまをまぶしていて中にあんこが入っているものが多いと思いますが、さいちのごまおはぎは違います。
表面に薄くごま。
表面に薄くごま。
中にはあんこが一般的。
中にはあんこが一般的。
さいちのごまおはぎは埋もれるくらいたっぷりのごまがまぶされている上、中にあんこが入っていないので、ごまの味わいをダイレクトに感じることができます。
まさにごま味、というほど濃厚なごまの香りと味を楽しめるので、「ごまおはぎって、ごまはおまけで結局はあんこ味じゃないか」と不満を持っていたごま好きの方々も納得できると思います。
きなこも埋もれていますね。(画像提供・根市伊奈穂さん)
きなこも埋もれていますね。(画像提供・根市伊奈穂さん)
私の妹は、「これまで人生で食べたごまおはぎの中で一番おいしい」と言っていました。

きなこもそんな感じかと思うのですが、私が食べる前に母と父と妹とで3個パックを食べつくしてしまったので、写真はおろか味わうことすらできませんでした。
きなこをまぶしすぎて砂の像みたいになってます(画像提供・ずんさん)
きなこをまぶしすぎて砂の像みたいになってます(画像提供・ずんさん)

ポストさいちのおはぎを探す。

さいちのおはぎは私の理想として心に深く刻まれましたが、私の住む神奈川県から秋保温泉までは遠く、おはぎのためにおいそれと通える距離ではありません。
なので、さいちのおはぎの代わりに、ポストさいちとなりうるおはぎを探してみることにしました。
スーパーやデパートでおはぎを買い求めました。
スーパーやデパートでおはぎを買い求めました。
大きさの比較をしやすいようにお皿は同じものを使うようにして、そのうちもっと分かりやすい指標があればとその時読んでいた文庫本と並べて撮るようにしましたが、あまり分かりやすくなってないですね。

カメラの画像がおはぎだらけになって全体的に暗いので、少し風景を変えてみようと屋外でおはぎを食べたりもしました。
4つのおはぎを
4つのおはぎを
外で食べてみました。
外で食べてみました。
ものすごくアリが寄ってきた上、たくさん蚊に刺されたので、屋外でおはぎを食べるのはあまりお勧めしません。
気分を変えようなどと考えず、おうちで食べるのがよいでしょう。

そんな紆余曲折の末、10店ほどのおはぎを食べました。
その中でも、甘みと塩気のバランスがほどよく飽きのこない味であること、2個入りで税抜159円という価格の手頃さ、つぶあんに豆の食感が生きている点などを考慮し、OKストアの『手造りおはぎ』をポストさいちとして、これからの生活に積極的に取り入れていきたいと思います。
勝手に決めたポストさいち。OKストアの手造りおはぎ。
勝手に決めたポストさいち。OKストアの手造りおはぎ。
ただ、どのおはぎもみんなちがってみんないいのですが、さいちを意識しすぎて食べているのか、ポストさいちを探して心を慰めるつもりが、却ってさいちが恋しくなってしまいました。
10月から期間限定の納豆おはぎが始まるそうなので、また行きたいと思います。

おはぎ、食べすぎました。

お彼岸シーズンという言い訳を使ってもごまかしきれないほどおはぎを食べました。
屋外で4つおはぎを食べた時は、3年振りくらいに胸焼けしました。
今後はもう少しペースを落としつつ、胸焼けしない程度におはぎを味わっていきたいとおもいます。

画像を提供してくださった皆さま、本当にありがとうございました!
裏面が一面あんこなおはぎも多かったです。
裏面が一面あんこなおはぎも多かったです。
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