お正月特集「共感ゼロ」 2013年1月1日

お正月特集「共感ゼロ」路線図にはラブストーリーが隠れてる

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路線図がすきだ。

路線図ってたいてい、カラフルできれいにまとめられた線の上に「四谷三丁目」だとか「西葛西」といった色気のない駅名がぶっきらぼうに書いてある。

よく見ると可愛いけど、ダサいジャージを着てる田舎の純朴な女子高生のような、いとしい雰囲気が路線図にはある。

6人のライターがワンテーマで書くお正月特集、1/1は「共感ゼロ」。共感にはほど遠い個人的なフェティッシュをご説明します。共感ゼロがせめて1に(100点満点で)になったらこんなに嬉しいことはありません。
鳥取県出身。東京都中央区在住。フリーライター(自称)。境界や境目がとてもきになる。尊敬する人はバッハ。(動画インタビュー)

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そんな路線図のなかで、いちばんなじみ深い東京の地下鉄路線図は、じつに味わい深いものがある。

例えば、半蔵門線と銀座線。

渋谷駅からそのふたつの路線を路線図上でたどると、こんな物語が浮かび上がってこないだろうかーー。
銀座線と半蔵門線は渋谷から都心に向けて出発したあと、表参道、青山一丁目という乗換駅でほぼ毎日出会っていた。

付き合っているといえばそう見えるかもしれないけれど、幼なじみのふたりは、お互いを恋人として意識していないつもりだった。

そんなふたりの前に、赤坂見附でとつぜん四谷方面から丸ノ内線があらわれる。

銀座線は丸ノ内線と恋に落ちてしまう。

同じ方向の銀座線と丸ノ内線は同じホームで乗り換えができるという衝撃的な出会いは、銀座線に「運命の路線は半蔵門線じゃなくて丸ノ内線の方かも……」と思わせるのに十分であった。
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その後、銀座線は丸ノ内線と溜池山王=国会議事堂、銀座と逢瀬を重ねるうちに、半蔵門線の事が気になりつつも丸ノ内線のあかるい人柄にひかれていく。

すっかり半蔵門線と疎遠になってしまった銀座線は三越前で半蔵門線と感動の再開を果たす。

半蔵門線は銀座線に「俺とやり直さないか?」と胸の内をあける。

「私は赤坂見附で冷たくしたのに……半蔵門線はなんでやさしいの……」と涙ぐむ銀座線。
「ごめん、でもやっぱりわたし、丸ノ内線のこと……」全てを察した半蔵門線は銀座線の言葉を制止するように「そうか、わかった……俺、実は夢があるんだ……南栗橋。南栗橋という夢が!」

お互い夢を目指し、しこり無く別れた銀座線と半蔵門線。

ところが、銀座線は衝撃的な現場を目撃してしまう。

神田で、丸ノ内線が淡路町で都営新宿線に浮気しているところを目撃するのだ。


「よりによって……あの赤字体質の都営と浮気するなんて!」


騙されたという思いとともに、胸に去来するのはやはり半蔵門線との楽しかった思い出……。

「やっぱり、私には半蔵門線しかない!」と、銀座線は思い直し、必死に半蔵門線に近づこうとする。
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ついに浅草までやってきた銀座線。

ここで都営浅草線に乗り入れさえすれば押上で半蔵門線と出会うことができる……しかし、メトロのプライドと集電方式がそれを許さなかった……。

数日後、半蔵門線は押上で出会った都営浅草線から「銀座線なら浅草で渋谷に折り返したよ」といううわさ話を聞くのであった……。

そんなラブストーリーが見え隠れする地下鉄路線図は実に面白いと思う。以上、ご清聴ありがとうございました。
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